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虐待・性被害の子に「付添犬」法廷で証言中、ストレス緩和も…実現の理由

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
「付添犬」として活躍が期待される 日本介助犬協会提供

新型コロナウイルスの影響で、休校や自粛が続いて居場所がなく、虐待や性被害にあう子供が増えた。子供が被害について、司法関係者や医療従事者などに伝える際、それ以上のトラウマを抱えないよう精神的なサポートをする「付添犬」が活動している。日本では専門の2機関の4頭が認証を受けた。7月、法廷で証言する女児に同伴した付添犬は、ゴールデンレトリバーのハッシュ。ハッシュのハンドラー、社会福祉法人「日本介助犬協会」の桑原亜矢子さんに取材した。

○子供の支援をするNPOと提携

日本では、2014年から児童精神科医や弁護士・研究者らが中心となり、アメリカの付添犬である「コートハウス・ファシリティ・ドッグ」の組織と連携し、活動が進められていた。

「私たちの訓練センターがある愛知県でも、以前から付添犬の相談がありました。体の不自由な方の自立と社会参加を支援する介助犬の育成をしてきて、様々な特性の犬がいます。でも、付添犬は、より高い質が求められ、難しい。いい犬が現れれば…と思っていました」

虐待された子の支援をしているNPO法人「神奈川子ども支援センターつなっぐ」に依頼され、2020年6月、つなっぐと業務提携した。つなっぐには「付添犬認証委員会」があり、現場の裁判官・弁護士・検察官などの判断で、子供にとって付添犬の支援が必要と判断された場合に、派遣するという。

日本介助犬協会は、(1)被害にあった子供が犬と触れ合える場の提供(2)司法の場への付添犬とハンドラーの派遣(3)付添犬の育成・訓練に取り組む。2020年9月までに、もう一つの提携団体である「日本動物病院協会」のセラピードッグと合わせ、東海・関東で12ケース派遣された。

ハッシュと桑原さん 日本介助犬協会提供
ハッシュと桑原さん 日本介助犬協会提供

○足元でぐっすり…緊張和らげる

桑原さんは、6歳のゴールデンレトリバー・ハッシュと、関東地方で活動を始めている。

「ハッシュは、介助犬になるための訓練を受けたけれど、ならなかった犬です。PRイベントや、病院などで触れ合う動物介在療法で活躍してきて、素質があります。社会参加できる性格ですし、子供が好き。マイペースで、どこにいても自分らしくリラックスしていられる犬です」

初めに、関東の弁護士が支援する3人の子供と、ふれ合いの場を設けた。信頼関係が大事だからだ。

「お子さんは、ハッシュをなでて、かわいいと言っていました。ふれ合いの後、裁判所でお子さんが証言する場に、私も付添犬のハンドラーとして同行しました。ハッシュにリードを2本つけ、1本をお子さんが、もう1本を私が持ちました」

もともと犬が好きな子で、「ハッシュと一緒なら」と証言する勇気を持つことができたという。

「法廷で、ハッシュはお子さんの足元でグーグー寝ていました。お子さんは、ハッシュの体温を感じ、張りつめた場でも気にせず寝ている姿を見て、緊張が和らいだそうです。担当の弁護士さんからも、犬がいると辛そうにしていた子供の表情が変わる、大きな意味があったと言われ、犬が勇気を与えるということが理解されたと思います」

○動物介在療法の実績を積んで

今回、依頼を受けてすぐに動き出せたのは、いつも多忙な現場が、違った状況だったからでもある。

「コロナ禍で、私たちの活動は止まってしまいました。ユーザーさんとの合同訓練だけでなく、動物介在療法やPRイベントもお休みです。一方、子供たちは休校や自粛のため行き場をなくし、虐待や性被害が増えていると聞きました。自分の被害を語らないといけないお子さんをサポートしたいと」

この数年、日本介助犬協会は公益活動として、動物介在療法に力を入れ、手ごたえを感じていた。ハッシュという適性のある犬もいた。

「介助犬の候補は、年に30頭ほどいます。でも、実際に介助犬になるのは、そのうち2~3割。公式の訓練をしていて、人の言葉に耳を傾けることができますし、他の分野で活躍できる犬はいます。

例えば、なでられるのが好きで、人に寄り添える犬『ミカ』は、大学病院の動物介在療法に活躍しました。障害あるお子さんの家庭に、譲渡した犬もいます。それぞれの特性を見極め、訓練し、付添犬として育てていきたいです」

〇コロナで収入減…支援呼びかけ

介助犬の事業やイベントが休止となり、もともと寄付で運営しているため、資金面は厳しい状況にある。 

「介助犬のユーザーは障害があり、いっそう感染に気を付けなければならないので、対面での介助犬との訓練や、体験会はできていません。Zoomでのやり取りや、面談をしています。イベントや講演会はほぼなくなり、大幅な収入減です」

付添犬として育成するには、一頭あたり150万〜250万円ほどかかるという。そこで付添犬の育成のために、10月末まで、クラウドファンディングに挑戦している。「最初の目標を上回る支援をいただいていますが、当会は3頭の犬を付添犬として育成中です。さらに活動を継続できる体制を、整えたいと考えています」

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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