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「首相の思い上がりのあらわれ」米紙、安倍政権の公文書廃棄問題を痛烈に批判「桜を見る会」問題

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
米紙ワシントン・ポストが「桜を見る会」問題を痛烈に批判した。(写真:Shutterstock/アフロ)

 米紙が、安倍政権の「桜を見る会」をめぐる公文書廃棄問題に鋭いメスを入れた。

 米紙ワシントン・ポスト(米国時間11月27日付け)が、「日本の首相をめぐる奇妙な話 公文書と大型シュレッダー」と題する記事を掲載し、安倍政権の公文書廃棄問題を痛烈に批判している。

 記事導入部では、公文書をめぐる以下の問題を列記。

・議論を呼んでいる政府主催のパーティーの招待者名簿? 廃棄。

・首相官邸への訪問者名簿? 廃棄。

・スーダンやイラクに派遣されていた自衛隊が遭遇した危険な出来事が記されている活動報告? 最初は廃棄されたと言われていたが、後になって見つかる。

・安倍政権に脅威を与えた学校スキャンダル関係の重要書類? 改ざんされたものもあれば、廃棄されたものもあり。

 そして、安倍政権が公文書にこっそりとアプローチしていたことや1回1000ページの書類破棄能力がある産業用シュレッダーが、今週、日本のトップニュースになっていることに言及。

 「桜を見る会」に15000人という多数の人々が招かれて5500万円かかったことが問題となり安倍首相の支持率が落ちていることや、同会には反社会勢力のメンバーや投資詐欺で告発された会社の元会長も招かれたと言われていること、共産党の宮本徹衆院議員が5月9日に招待者名簿をリクエストした日に、その名簿がシュレッダーにかけられていたことなども指摘している。

安倍首相の性格と関係

 その他、指摘されている点を紹介したい。

・記録法をめぐる日米の法律の違い

 アメリカは「大統領記録法」で、大統領が関わった書類はすべて歴史的記録として保存し、国立公文書館に送ることが規定されている。一方、日本の法律では、公文書は最低1年は保存すべきであるとされてはいるものの、適切と見なされれば、保存期間が1年未満の公文書でも、官僚の自由裁量で処理することが許されていると説明している。

・ルール破りな安倍首相

 日本は「情報の自由」という点では、アメリカのような欧米の民主国家からは大きな後れをとっており、1999年に「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」を通過させたものの、安倍氏は、そのルールを組織的に破り、法律の条項を元に戻そうとしてきたと指摘。

 「不都合な事実を隠蔽するために、書類を改ざんし、廃棄することはパターン化しているようです。彼らは、ルールを前の状態に戻し、公文書を出さずに済む方法を探そうとしていたようです。つまり、ルール破りとルール変更をごちゃ混ぜにしている。安倍氏が7年以上、首相として、政府と官僚を個人的にコントロールすることができた結果、こうなったのです」

という上智大学の中野晃一教授のコメントも紹介している。

・安倍首相の性格との関連性

 さらには、公文書問題は安倍首相の性格とも関係があり、首相在任期間が長くなるほど、そのことが明白になっていると指摘。立憲民主党の黒岩宇洋衆議院議員の「首相の思い上がりのあらわれです」というコメントも紹介している。

 そして、最後には、「安倍氏は、再検討のため来年の「桜を見る会」を中止すると発表したが、国民の信頼を取り戻すことはなかった」と結んでいる。

日米の政界で起きる“奇妙な偶然”

 この記事を読み、安倍首相とトランプ氏の共通点を見出した。

 アメリカでは「ウクライナ疑惑」をめぐり、トランプ氏の弾劾公聴会が開かれたが、その中で、議論されたことの一つに、9月9日の出来事がある。

 米下院情報委員会は、9月9日に、内部告発(7月25日に、トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した際、トランプ氏がゼレンスキー氏のホワイトハウス訪問とウクライナへの軍事支援の見返りにバイデン氏らを調査するよう求めたと考えられるようなやりとりがされたという告発)があるという事実を知ったが、その同じ日、トランプ氏は見返りを求めていたのではないかと疑っていたソンドランド駐EU米大使に電話で「ウクライナに何を求めているんですか?」と詰問された際、「何も求めていない。見返りは求めていない」と否定している。否定したのは、電話の時点で、トランプ氏にはすでに内部告発があったことを知っていたからだと指摘されている。そして、2日後には、見返りは求めなかったことを証明するかのように、保留にしていたウクライナに対する軍事支援を開始したのだ。

 これは、共産党の宮本徹衆院議員が5月9日に招待者名簿をリクエストした同じ日に、その名簿がシュレッダーにかけられていたことと呼応するような出来事だ。

 アメリカも日本も、政治の世界では“奇妙な偶然”が起きるらしい。

 ちなみに、同じワシントン・ポストの記事によると、トランプ氏は書類を破って捨てる癖があるため、政権の人々は破られてバラバラになった書類を継ぎ合わせる作業を行なっているという。

 しかし、バラバラに破られた書類は継ぎ合わせて元に戻せるだけ、トランプ政権は安倍政権よりまだましということかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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