解説死刑の存廃は、刑事法の枠組みを超えて、日本の司法制度の根幹にかかわる問題として長らく議論されてきました。今回、井田良教授など著名な研究者、林真琴前検事総長ら第一線で活躍されてきた実務家らが、日本の死刑制度を考える懇話会を設立し、議論を経て、公的な検討を行う会議体の設置を提言されました。この動きは、従来ともすれば個別的、散発的になりがちであった議論をまとめるものであり、その影響の大きさは否定できません。 官房長官のコメントは、これに応えるものとして、死刑の必要性を説くだけでなく、およそそのような会議体の設置自体の必要性も否定したものです。重要な司法制度の改革には、通常、法制審議会で検討されるのですが、政府としては、検討の必要性を認めないというわけです。 存廃自体には意見が分かれて然るべきですが、この時点で公に検討の対象とする必要性は否定できないと思われます。
コメンテータープロフィール
旅行会社勤務を経て29歳で立命館大学に入学し、3年生の時に司法試験に合格。卒業後は京都大学大学院法学研究科に進み、刑事法を専攻。2005年に近畿大学法学部専任講師となり、現在は教授。2011年から2012年にかけて、ドイツ・アウクスブルク大学客員教授を務める。専門は刑事法全般(特に刑事訴訟法)。著書は、『刑事訴訟法』、『刑事手続における審判対象』、『刑事弁護の理論』(全て単著)。法学博士。趣味は洋画鑑賞、水泳、見る将(大山・中原時代からの筋金入り)。