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寺沢拓敬

寺沢拓敬

認証済み

言語社会学者

報告

補足1つ目の論文は,授業料無料の大学と年間約1000ユーロ(当時レートでおよそ15万円程度)の大学を比較し,授業料ありの方が学生の授業評価アンケートが改善したという研究です。「無料→1000€」の話を,150万円への増額の根拠にするのはかなり苦しいでしょう。また,論文著者も書いている通り(8頁),授業料を払うこと自体の満足度向上も無視できません。2つ目の論文は大学ランキングを分析していますが,大学ランキングは周知の通り,教育の質"だけ"を評価していません。むしろ研究成果に大きなウェイトをつけています。資金が多いほど研究環境が良くなり順位が上がるのは自明です。これも「150万円」プランを正当化する根拠にはなりません。そもそも教育政策をめぐるエビデンスは,そのものズバリという研究はほぼないので,多数の傍証を総合的に評価する必要があります。少数の研究だけで断言できるほど単純な世界ではありません。

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  • 花輪陽子

    シンガポール在住FP(CFPⓇ・1級FP 技能士)

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コメンテータープロフィール

関西学院大学社会学部准教授。博士(学術)。言語(とくに英語)に関する人々の行動・態度や教育制度について、統計や史料を駆使して研究している。著書に、『小学校英語のジレンマ』(岩波新書、2020年)、『「日本人」と英語の社会学』(研究社、2015年)、『「なんで英語やるの?」の戦後史』(研究社、2014年)などがある。

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