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寺沢拓敬

寺沢拓敬

認証済み

言語社会学者

報告

見解「ローマ字教育のせいで英語教育の効率が悪くなっている」ことがまるで周知の事実のように書かれていますが,そんな研究結果はありません。エビデンスの話は別にしたとしても,そもそもローマ字教育は,日本語を表記するためのもであり,英語教育のためにあるものではありません。仮に,英語指導者が教えやすいという理由だけで,小学校でのローマ字教育を省略したとしましょう。このシナリオで,割を食うのはローマ字教育を前提にしていた他の科目の担当者です。たとえば,情報教育(とくにPC使用)の指導者や国語(とくに国文法=活用における音韻変化の指導の点で重要)の指導者。英語業者は,英語学習にしか関心がないのかもしれませんが,小学校教育は英語のためだけにあるわけではありません。教育課程全体を見据えながらの議論が必要だと思います。

コメンテータープロフィール

関西学院大学社会学部准教授。博士(学術)。言語(とくに英語)に関する人々の行動・態度や教育制度について、統計や史料を駆使して研究している。著書に、『小学校英語のジレンマ』(岩波新書、2020年)、『「日本人」と英語の社会学』(研究社、2015年)、『「なんで英語やるの?」の戦後史』(研究社、2014年)などがある。

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