長い間、妻•亥聖子さんの介護を続けてきた夫•哲也さんの「ケアラー」(家族介護者)としての孤独感は、自分の体調の悪さとともに、ご夫妻の心のなかにすべて封印され、誰とも共有されることを望んでいなかったのでしょう。 ご近所の方々はそれを心配し、メッセージを送り続けていたようにうかがえます。また、介護専門職の関わりもあったようです。それでも、村武さんご夫妻の孤独感が共有されることはありませんでした。 近年、「ヤング•ケアラー」という言葉で、家族の介護などを担っている若年者の問題が注目を集めています。それは介護する側の「自己犠牲」と「孤独」という言葉に集約されるのだと思います。しかし、それは年齢階層を問わず、家族介護者に通底する問題です。そうした家族介護者をサポートするわが国の社会システムや制度等の貧弱さが端的かつ如実に表れた事件だと言えるでしょう。
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コメンテータープロフィール
1964年・島根県生まれ。1986年から医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーの実務を経験し、2005年から東洋大学で介護福祉士などの福祉専門職養成と高齢者福祉・介護保険制度・ケアマネジメントの研究を行う。社会福祉士・介護支援専門員。