「訪問介護」の倒産が72件に、2カ月残し年間最多超え ヘルパー不足や運営コスト増、報酬引き下げも影響か
2024年1-10月「訪問介護事業者」の倒産動向調査
ヘルパー不足の長期化や燃料・光熱費の高止まりなど運営コストの増加が響き、2024年の「訪問介護事業者」の倒産が10月までに72件判明し、2023年の年間67件を上回り、過去最多を記録したことがわかった。報酬改定に伴い訪問介護の報酬が引き下げられたことも倒産増に影響した可能性がある。2024年は80件を大幅に上回るペースで、小規模の事業者の淘汰が加速している。 10月までの「訪問介護事業者」倒産は72件だった。このうち、個人企業他を含め資本金1千万円未満が61件(構成比84.7%、前年同期48件)、従業員数10人未満が68件(同94.4%、同41件)と、小・零細規模の事業者が大半を占めた。 訪問介護は、長引くヘルパー不足で倒産件数が高止まりしていた。そこに、コロナ禍の利用控えによる業績悪化を余儀なくされた。コロナ関連の資金繰り支援策で倒産は抑制されたが、アフターコロナでは、支援縮小と物価高、他産業との賃金格差によるヘルパー不足などで、倒産の増勢が強まっていた。 小・零細の訪問介護事業者は、地域の1軒1軒を回るサービスを提供するケースも多いが、ガソリン代の高騰などでコストが増大するなか、2024年の介護報酬改定で訪問介護は基本報酬が引き下げられた。事業者は、「今は事業所存続が優先となり、人手不足と効率を優先し移動時間を減らすため近隣しか受けられない。身体介護しか受けられない状況だ」と嘆く。時間もコストも必要な自宅を訪問する生活支援サービスの提供が難しくなり、また、主力業務を生活援助から身体介護への切り替えが進行すれば軽度者の重度化を懸念する声も聞かれる。 厳しい経営環境が続く訪問介護事業者。物価高に伴う運営コストは高止まりし、ヘルパー不足の解消見通しは立たない。そこに基本報酬の引き下げのダメージを受けやすい小・零細の訪問介護事業者の倒産増がこれから本格化する恐れがある。 住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることを目指す「地域包括ケアシステム」の柱でもある訪問介護事業者の倒産増は、自宅で訪問介護サービスを受けられない地域が増えることも考えられる。公定価格で価格転嫁が難しい事業であるだけに支援が行き届かなければ、倒産増に歯止めはかからないだろう。 ※ 本調査は、日本産業分類(細分類)の「訪問介護事業」を抽出し、2024年10月までの倒産を集計、分析した。 ※ 調査開始は介護保険制度が始まった2000年から。