補足イスラエルほど考古学に熱心な国も珍しい。自分たちの祖先が、この土地に生活していたのだという事実を証明したいという国家的な要請があるからだ。それは、この土地は、もともと自分たちの土地だ。現在のイスラエルの存在は正統なのだという議論につながっている。イスラエル人は、右手に銃を持って戦い、左手にショベルを持って地面を掘っている。 さて、今回は発掘中ではなく、イスラエル沖の海底ガス田の開発中に沈没船が発見された。イスラエルとレバノンの沖にガス資源が眠っているのはわかっていたが、両国間に海上の国境線をめぐり対立があったので、開発が進まなかった。ところがアメリカの仲介で2022年に両国が海上国境の画定に合意して以来、開発が進んできた。その副産物ば今回の考古学的な発見である。対立する例の多い両国だが、協力することでエネルギー開発が可能になった。政治と考古学の関係を考えさせる発見だ。
コメンテータープロフィール
国際情勢をわかる言葉で、まず自分自身に語りたいと思っています。北九州で生まれ育ち、大阪とニューヨークで勉強し、クウェートでの滞在経験もあります。アメリカで中東を研究した日本人という三つの視点を大切にしています。映像メディアに深い不信感を抱きながらも、放送大学ではテレビで講義をするという矛盾した存在です。及ばないながらも努力を続け、その過程を読者の皆様と共有できればと希求しています。
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