解説高知さんの意見はまさにその通りで、法の不可解な点だといってもよい。ラッパー逮捕の根拠条文は麻薬特例法9条であり、違法薬物を使用することの「あおり又は唆し」行為が処罰されている。これは、違法薬物を使用するよう広く社会に訴えることをいい、例えば集会やSNSなどで薬物使用を訴えるような行為をいう。今回は記事にあるような言動がこれに該当すると解されたのだろう。なお、大麻の無害性を主張したり、大麻解禁を訴える行為はこれには当たらない。 他方、刑法の賭博罪が問題になる違法オンラインカジノでは、上のような「あおり又は唆し」行為を処罰するような条文は存在しない。有名人が違法オンカジのアンバサダーに就任して宣伝しても、警察が動かないのはそのような事情による。なお、特定の人に対して犯罪を唆す場合は「教唆」(刑法61条)といって、相手が犯罪を実行すれば処罰される。これと「あおり又は唆し」行為は異なるのである。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。
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