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園田寿

園田寿認証済み

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甲南大学名誉教授、弁護士

報告

補足たとえば現場に被告人(被疑者)の足跡や指紋が残っていた場合、それがいつのものかは分からないので、その証拠は犯罪事実を直接証明するものではなく、犯罪事実に関係するかもしれないといえるにとどまります。「服に血がついているのを見た」という知人の証言も同じで、そのことから彼が犯人だとは証明できません。しかし状況証拠の場合、そこに捜査官の「彼がやったに違いない」という有罪の方向への推認が働きやすく、これが状況証拠による犯罪認定の一番危険な点だといえます。これに加えて本件では、その知人が見たとされるテレビ番組がそのとき放送されたものではなく、警察官の記憶違いに基づく誘導によるものだった可能性があります。しかも検察官もその誤りを知りながら裁判を進めていきました。まさに証拠のねつ造といえるような行為です。判決で「不誠実で罪深い不正の所為」と、検察官が厳しく批判されていますが、その通りだと思います。

コメンテータープロフィール

園田寿

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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