見解薬物政策に対する今の基本構造は、1961年の麻薬単一条約によって形成された。それは、「医薬品」と「薬物」を区別し、医薬品へのアクセスを確保する一方で、薬物に対するアクセスを違法とし、抑圧的システムを構築することであった。 そしてニクソン大統領が1971年に「薬物戦争」を開始し、抑圧的システムがいっそう懲罰的性格を強め、世界中を薬物戦争に巻き込んだ。61年条約は71年と88年の2つの条約によって補完されたが、違法薬物の供給と薬物に侵される人びとは増え続けた。 しかし今、劇的な変化が起きている。国際社会は違法薬物に対する懲罰主義こそが、非効果的で有害な薬物統制をもたらすとし、人権にもとづいた薬物政策を目指し、最終の消費者の健康と安全を守り、薬物の効能と品質、アクセスを厳格に管理するサプライチェーンの構築を目標としている。 日本の動き(大麻使用罪の創設)は、世界に逆行しているのである。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。
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