解説孫子の兵法でもあるが、中国の国際交渉の手法の一つとして、相手国内に分断を作り出して、その交渉力を弱めるというのがある。 当初は、福島県産などを中心とした海産物の輸入禁止(約900億円とされる)を打ち出すことで、漁業関係者と自民党の亀裂を作り、それによって政治的分断を深める方策だったように見える。 ただ、分断を作るためには、中国の主張を代弁する勢力の存在が欠かせないのだが、海産物の輸入禁止措置では、あまりにも科学的根拠が欠けていたので、日本国内で中国支持派を拡大することに失敗している。一部の野党関係者を除き、中国への賛同者は出なかった。 こうなると、中国は日本に対する圧力をさらにステップアップさせることになるだろう。この段階になると、中国の圧力に日本が屈した、という「面子」をめぐる政治交渉に変化してゆく。実は日本は国内の分裂が影響し、面子をめぐる政治交渉では劣勢に立たされることが多い。
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コメンテータープロフィール
岡山県出身。一橋大学大学院修了(博士・法学)。防衛庁防衛研究所主任研究官(アメリカ研究担当)より拓殖大学海外事情研究所教授。専門は、国際関係論、安全保障、アメリカ政治、日米関係、軍備管理軍縮、防衛産業、安全保障貿易管理等。経済産業省産業構造審議会貿易経済協力分科会安全保障貿易管理小委員会委員、外務省核不拡散・核軍縮に関する有識者懇談会委員、防衛省防衛装備・技術移転に係る諸課題に関する検討会委員、日本原子力研究開発機構核不拡散科学技術フォーラム委員等を経験する。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の自律型致死兵器システム(LAWS)国連専門家会合パネルに日本代表団として参加。