見解ドローンの侵入を許したという問題も大きいが、この映像が中国の映像サイトに投稿され、日本でも転載されて広く知られるようになった時点から、防衛省が具体的に対応するまでの時間差に注目すべきだろう。 投稿された当時、この映像が「フェイク」である可能性が否定できなかったという問題はあるが、実際の護衛艦の状態と映像を比較して、どれだけ本物に近いかを判断することはできたはずである。それを踏まえて映像が公開されたことによるリスクを評価することも可能であった(もちろんそれをしていると信じたい)。 それらを総合的に考えると、今回の事案は、防衛省自衛隊がネット上に出回る様々な映像を、早い段階から監視し、そのリスクに対処する作業を十分に行ってこなかった件、とも解釈できる。サイバー防衛の必要性が叫ばれる中で、政府によるネットの監視の強化が好ましいわけではないが、必要な措置は積極的にとって欲しいと思う。
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コメンテータープロフィール
岡山県出身。一橋大学大学院修了(博士・法学)。防衛庁防衛研究所主任研究官(アメリカ研究担当)より拓殖大学海外事情研究所教授。専門は、国際関係論、安全保障、アメリカ政治、日米関係、軍備管理軍縮、防衛産業、安全保障貿易管理等。経済産業省産業構造審議会貿易経済協力分科会安全保障貿易管理小委員会委員、外務省核不拡散・核軍縮に関する有識者懇談会委員、防衛省防衛装備・技術移転に係る諸課題に関する検討会委員、日本原子力研究開発機構核不拡散科学技術フォーラム委員等を経験する。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の自律型致死兵器システム(LAWS)国連専門家会合パネルに日本代表団として参加。