本治療薬候補については、治験を含む試験結果が論文化されておらず詳細は不明ですが、プレスリリースなどからは、臨床的には明確な症状や予後改善は証明されておらず、ウイルス量を低下させたという検査上の変化が観察されていることまでしかわかっていません。 この状態では、すでに効果のあることが証明され承認されている他社の抗ウイルス薬(メルク社・ファイザー社)がある以上、承認することも、たとえ承認されたとしても処方することも考え難い薬剤となるでしょう。 それに加えて、催奇形性という重大な副作用が認められれば使用の幅はさらに狭まります。実質的には処方する選択はあまりとられないと考えられます。 いずれにせよ、臨床試験でしっかりとハードアウトカム(臨床的に意味のある効果)の証明をしてから承認申請をするべきで、「国産」だからといって手続きを簡略化させたりすることを擁護すべきではないでしょう。
コメンテータープロフィール
医師(病理専門医)、薬剤師、博士(医学)。京都大学薬学部、名古屋大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。専門は病理学・ウイルス学・免疫学。ワクチンの情報、医療リテラシー、トンデモ医学等の問題をまとめている。
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