解説1人目の友人に対する取材拒否依頼のLINEメッセージは当時の過熱した報道からすると当然で、殺人容疑の立証にはプラスに働きません。 また、2人目の友人の供述によると、男性が生前、元妻に対して「兄弟に遺産を渡したくない」「君に遺産を受け取ってほしい」と話していたということになります。しかし、この5年前に田辺市に全財産を寄付するとの遺言書を作成したとされており、遺言書について元妻とどのようなやり取りがあったのか説明が必要です。 これらと比べると、男性の遺体を調べた警察官の証言は重要です。男性が自ら覚醒剤を飲んだ可能性は乏しいという事実を明らかにすることで、少なくとも自殺ではなかったと立証することにつながるからです。 もっとも、検察はさらに事故死ではなく他殺だったと立証する必要がある上、その犯人が元妻に間違いないというさらにハードルの高い立証まで求められます。次の証人の証言が注目されます。
コメンテータープロフィール
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。