解説検察は今回のケースと類似する和歌山白浜・水難偽装殺人事件と同様に「完全犯罪」といった元妻によるネットの検索履歴など様々な状況証拠を積み上げて有罪立証を行おうとしましたが、失敗に終わりました。 というのも、そのまま飲むと苦い大量の覚醒剤をどのようなやり方で飲ませたのか、それこそ検察側が「カプセルに入れて飲ませた可能性がある」と主張しているわりには肝心のカプセルを元妻がいつどこで入手したのか詰めきれておらず、殺害の態様など未解明な部分が多いままで終わったからです。 覚醒剤入手の件も、元妻に手渡したという密売人は覚醒剤だったと証言したものの、その密売人にデリバリーを指示した密売の元締めは偽物だったと証言しており、後者の証言の方が元妻の供述と合致するという錯綜した状況となっていました。 「疑わしきは罰せず」という刑事司法の原則が貫かれた形となった無罪判決でしたが、検察側の控訴が予想されます。
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コメンテータープロフィール
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。
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