見解イスラエル国会がUNRWAの活動を禁止する法案を可決し、ネタニヤフ政権は人道援助のための国際協力体制をつくると言っている。どのような代替策をとっても、現場の支援を実施する医療や経済、社会問題、建設、土木などのテクノクラートと、そのもとで復興のために汗を流して働く人々の中心は、ハマスのメンバーや支援者にならざるを得ない。ハマス支持者はガザで35%以上いて、特にイスラム的な社会・慈善意識が強い人々である。ガザで長年活動してきたUNRWAは、ハマスと距離をとりつつも協力する術を知っていたが、UNRWAがなくなれば、海外からの支援はハマスが現場で支配することになるだろう。ハマスがライバルのファタハが主導する自治政府の選挙で勝利したのは、社会に浸透し、社会の一部であるハマスの政治・社会面での影響力の大きさのためであり、UNRWA活動停止は、ガザと西岸を丸ごとハマスに差し出すようなものである。
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コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com