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川上泰徳

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中東ジャーナリスト

報告

見解ハマスが「新要求」を出し、米政府はガザ停戦案を提案できなくなったというが、ワシントン・ポストの元の記事を読むと、「新要求」は人質解放で、人質の兵士の解放はイスラエルが収監しているパレスチナ政治犯の終身刑囚との交換で合意していたが、ハマスが民間人の人質解放でも終身刑囚の解放を条件とするよう求めたというもの。記事ではネタニヤフ首相がガザ南の回廊に軍駐留を求めたことで交渉が行き詰まったところに、ハマスの新要求が追い打ちになったという書き方。ただし、人質交換に条件を付けたことが交渉を「頓挫」させるほど本質的かどうか疑問だ。記事では米政権内でネタニヤフ首相を合意の主な障害と公に非難するかどうかとかという議論があったとする。結局、米国がネタニヤフ首相にガザ南の境界での軍駐留を撤回させることができなかったが、停戦の頓挫をイスラエルの責任と言わないために、ハマスの「新提案」のせいにしたという印象である。

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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