解説政府の責任で福島第一原子力発電所の廃炉を進める意思を示すために、岸田首相が対話に臨むことは求められるプロセスだった。ALPS処理水の放出は廃炉のためにも必要であり、IAEAの見解が示すように放出を巡る科学的な争点はさほどない。問題が残るのは社会のほうだろう。「首相は処理水を飲め」「福島の魚を毎晩食べてみろ」という声は不安の表出だ。処理水は当然ながら飲んでも問題はないが、それは単なるパフォーマンスの強要にすぎない。安全性の確認にも力を入れている福島で水揚げされた魚はすでに出荷されており、口にする機会も増えてきた。福島の漁業をさらに回復基調に乗せて、余計なイメージ低下と不安の広がりを防ぐために何ができるか。これが課題となるだろう。それを示すのは政府の責任であると同時に、メディアの責任でもある。冷静な報道を続ける必要がある。
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コメンテータープロフィール
1984年、東京都生まれ。2006年に立命館大学法学部を卒業し、同年に毎日新聞社に入社。岡山支局、大阪社会部。デジタル報道センターを経て、2016年1月にBuzzFeed Japanに移籍。2018年4月に独立し、フリーランスの記者、ノンフィクションライターとして活躍している。2011年3月11日からの歴史を生きる「個人」を記した著書『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)を出版する。デビュー作でありながら読売新聞「2017年の3冊」に選出されるなど各メディアで高い評価を得る。
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