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星周一郎

星周一郎認証済み

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東京都立大学法学部教授

報告

解説高速度類型の危険運転致死傷罪の規定では、「その進行を制御することが困難な高速度」であることを要件としています。従来の裁判例では、「自動車自体が物理的に制御できないこと」を意味し、「他の自動車・歩行者との関係など、交通状況に応じた制御が困難という意味ではない」とする立法趣旨に基づいた解釈が重ねられてきました。 弁護側の主張は、これに沿ったものといえます。 検察側の「194キロでの走行は車体が大きく揺れ、少しのミスで操作を誤ることがある」とする主張も、従来の裁判例で積み重ねられた解釈の枠組みの中で、危険運転致死傷罪の成立が認められるとする主張です。 問題の根源は、現行の危険運転致死傷罪のそもそもの成立範囲が、社会一般の常識的判断に比べて狭すぎることにあります。本件の裁判の帰趨とは別に、現在の危険運転致死傷罪をはじめとする自動車運転処罰法の枠組みの是非の問題も、あわせて考える必要があります。

同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 荒木樹

    元検事/弁護士

    補足この事件は、当初は、大分地検が、危険運転致死罪の適用が困難であると一旦は判断し、過失運転致死罪で公判…続きを読む

コメンテータープロフィール

1969年愛知県生まれ。東京都立大学法学部卒業、博士(法学・東京都立大学)。専門は刑事法。近年は情報法や医事法にも研究対象を拡げている。著書として『放火罪の理論』(東京大学出版会・2004年)、『防犯カメラと刑事手続』(弘文堂・2012年)、『現代社会と実質的刑事法論』(成文堂・2023年)、『アメリカ刑法』(訳・レクシスネクシス・ジャパン・2008年)など。

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