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星周一郎

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東京都立大学法学部教授

報告

見解大変に痛ましい事件です。犯罪統計としては「介護疲れ」を主たる動機とする殺人にあたりますが、年間約800件程度発生する殺人のうち、毎年3~5%程度を占めています。多くは「老老介護」の事案ですが、本件のように子の介護の場面で発生することも少なくありません。 殺人である以上、捜査・処罰の対象にせざるを得ませんが、処罰をすればそれで済む、という話ではありません。本件の母親の「今はとにかく元に戻りたい、娘に会いたいです」という供述に象徴されるように、いかに未然に防止するかが重要で、ともすれば家族依存になりがちな介護の負担を減らし、ケアのための体制のさらなる整備が、何よりも必要です。 たしかに、社会保障費の増大や、減税問題も取り沙汰される状況下、支援のための財源や人的リソースの確保は簡単ではありません。しかし、こういった悲劇を防ぐためには、多機関連携など、さらなる工夫が求められます。

同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 出口保行

    犯罪心理学者/東京未来大学こども心理学部教授

    解説こうした事件で受刑した受刑者と刑務所で何例も面接をしました。みな自分のしたことをとても後悔しており、…続きを読む

コメンテータープロフィール

1969年愛知県生まれ。東京都立大学法学部卒業、博士(法学・東京都立大学)。専門は刑事法。近年は情報法や医事法にも研究対象を拡げている。著書として『放火罪の理論』(東京大学出版会・2004年)、『防犯カメラと刑事手続』(弘文堂・2012年)、『現代社会と実質的刑事法論』(成文堂・2023年)、『アメリカ刑法』(訳・レクシスネクシス・ジャパン・2008年)など。

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