補足犯罪収益等を直接没収できない場合に、その価額相当分を徴収するのが「追徴」です。犯した罪の大きさに応じて科される懲役や罰金等の刑罰とは異なり、没収・追徴には、犯罪収益を犯人の手元に残さないという保安処分的な意味があります。しかし、日本では、没収・追徴は、犯人の有罪判決を前提にする「刑罰」の扱いであるため、犯罪収益と思われる財産でも、犯人を検挙し、合理的な疑いを超える有罪立証ができなければ、没収・追徴はできません。 アメリカでは、犯罪収益と思われる財産を民事訴訟や当局の行政処分により没収する制度が整備され、活用されています。イギリスでも、重大犯罪を犯したと疑われる者が所有する出所不明の財産について、その出所を説明できなければ没収可能とする制度が設けられています。 暗号資産を悪用したマネー・ロンダリングへの対処も含め、(組織)犯罪の防止や被害者救済のためにも、法整備が急務の領域です。
コメンテータープロフィール
1969年愛知県生まれ。東京都立大学法学部卒業、博士(法学・東京都立大学)。専門は刑事法。近年は情報法や医事法にも研究対象を拡げている。著書として『放火罪の理論』(東京大学出版会・2004年)、『防犯カメラと刑事手続』(弘文堂・2012年)、『現代社会と実質的刑事法論』(成文堂・2023年)、『アメリカ刑法』(訳・レクシスネクシス・ジャパン・2008年)など。
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