解説太陽フレアの影響は地上で何かが起きるよりも先に宇宙で人工衛星にダメージを与えることがあります。2003年10月に発生した大規模な太陽フレアによってJAXAの地球観測衛星「みどりⅡ」は太陽電池パドルと衛星本体をつなぐケーブルが損傷して電力を得ることができなくなり、打上げから1年も経たずに運用を終了してしまうということがありました。このとき大きな故障が発生した衛星は世界で4例もありました。みどりⅡの軌道は、それまでの例では太陽活動の影響を大きく受けるものではなかったために対策は限定的でした。厳しい教訓から、現在は衛星の設計基準を見直して同様の故障を防ぐようになっています。同じく米国のスペースXは2022年2月に打上げたばかりの衛星を太陽活動の影響で38機失いました。そこでスペースXは打上げ時の軌道を調整して環境変化に備える準備期間を設け、今回の太陽活動では衛星の損傷を避けることができました。
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コメンテータープロフィール
1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。
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