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驚異の過密ダイヤを守るJRの心臓部――初公開「東京総合指令室」の秘密に迫る

6/28(金) 7:00 配信

東京の街に張り巡らされた鉄道網。その路線の数は「世界一」だ。首都圏でJR42路線、私鉄など91路線、地下鉄15路線。合計148もの路線が、脳神経のようにつながり、一日延べ4000万の人たちを運び続けている。時間の正確さも世界で類をみない。複雑で過密な東京の鉄道はどのように運行され、ダイヤが守られているのか。首都圏の鉄道運行を支える「JR東日本 東京総合指令室」の秘密に迫った。(取材・文=NHKスペシャル「東京ミラクル」取材班/編集=Yahoo!ニュース 特集編集部)

総合指令室 壮絶な一日の始まり

「ピロロピロロピロロ!」――。4月11日、朝6時41分。指令室に大きな警告音が鳴り響いた。最大級の警戒を呼びかける「防護無線」だ。指令室の空気が一気に張り詰めた。京浜東北線を担当する指令員が大声を上げる。

「京浜東北線、神田駅北行大宮方面行き電車で人身事故発生!防護無線受信した列車はその場で停車願います」

防護無線とは人身事故などの緊急時に乗務員などが発信する、周囲の列車に危険を知らせる無線のこと。受信した付近の列車は、二次被害を防ぐために全て停止することになっている。事故が起きた京浜東北線だけでなく、周辺を走る中央線、山手線、総武線など5路線の列車が停止した。

すでに通勤時間帯に差し掛かっている。都心の大動脈がことごとく止まり、指令室には、大混雑の駅の係員や列車の乗務員から、切迫した声で問い合わせが殺到する。総武線の車掌から連絡が入った。

「ただいま錦糸町停車中ですが、今後の運転計画など教えてください」

指令員が早口で答える。

「御茶ノ水までは時刻通りに参ります。御茶ノ水発車後につきましては、いったん確認を取り指令から連絡行います、どうぞ」

このとき、中央線と総武線のブースにいた指令員は15人ほど。指令室のあちこちで指示の声が飛び交う。声と声が重なり、自然とボリュームが上がる。担当以外の路線の情報にも耳をそばだてながら、いかに短い時間で運転再開を判断し、指示を的確に伝えられるか。間断なく寄せられる問い合わせに、指令員は少ない言葉数で簡潔に指示を出すことが求められる。指令員指導グループリーダーの川上和成さんは言う。

「駅員や乗務員など現場と連絡を密に取り、いかに正しく状況を把握するかが第一です。時間をかけすぎれば、お客様にご迷惑をおかけする。必要な情報を瞬時に見極め、判断する力が何よりも重要です」

「JR東日本 東京総合指令室」は首都圏の列車運行を束ねる心臓部だ。これまでにほとんど取材されたことはなく、撮影が許可されたのは初となる。

指令室の広さは約3800平方メートル。テニスコートの面積の約15倍になる。所属する指令員は総勢550人。首都圏の24路線それぞれの運行管理をするブースが設置され、山手線、京浜東北線など路線ごとに担当者が振り分けられている。多い時には150人ほどが同時に業務にあたる。

指令室の中心にある巨大なモニターには、ピーク時で数百本以上の列車の運行状況が映し出される。指令員は担当する路線の動きに目を凝らし、さまざまなトラブルで遅延が発生すると、列車や駅に指示を出す。遅延をできるだけ速やかに回復させるのが使命だ。

全ての列車運行の基準となるのが、列車運行図表=ダイヤグラムだ。縦に駅名、横に時刻。スジと呼ばれる斜めの線が列車の動きを表す。小さな記号に目をこらせば、秒単位で動いていることがわかる。

新宿駅を10時31分50秒に出発する中央線の快速・1007H(オレンジの線)は、三鷹駅に10時48分50秒に到着。その間に9本の上り列車とすれ違う。三鷹駅では、後続の特快待ちをするために3分30秒停車、そのあと立川方面に向かうダイヤになっている

この秒刻みのダイヤを守るのは至難の業。定時運行を妨げるさまざまなトラブルが発生するからだ。トラブル発生のたびに、指令室は壮絶な現場となる。

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