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米大統領選挙と自民党総裁選の行方とFRBや日銀の金融政策への影響

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日米の金融政策の行方を占う上で、米国の大統領選挙と自民党総裁選の行方が注目される。

 トランプ前大統領は8月8日の記者会見で、FRBの決定に、大統領が発言権を持つべきだと主張した。副大統領候補のバンス上院議員も、FRBの政策を決める場に選挙で国民の支持を得た政治家が含まれていない点を問題視した。

 これに対して民主党の大統領候補に指名されたハリス副大統領は現状維持を強く訴えている。バイデン政権は繰り返しFRBの独立性を尊重する姿勢を強調してきた。

 米国の大統領選挙は11月5日に投開票が行われる。その結果次第ではFRBの独立性が維持できなくなり、政治的な圧力を受けやすくなりかねない。こちらは議会選挙の結果も影響することになる。

 日銀については、政府が日銀の金融政策決定会合で議決延期請求権を持つが強制力はない。中銀トップを含めた高官人事で金融政策に影響を及ぼすことも可能である。

 現実にはアベノミクスと呼ばれた政策において、政治の圧力を直接受けていた。それは総裁・副総裁人事にも現れており、黒田総裁の元では日銀は正常化どころか、方向転換すら出来ない状態となっていた。

 これが市場での歪みを形成することになり、日本の債券市場は機能不全に陥った。円安も招くことで投機ポジションも膨らむことになる。

 岸田政権となっても、一部の自民党議員などから方向転換はするなとの意見も出ており、物価高にもかかわらず方向転換はなかなか容易ならざるものとなっていた。

 それでも自民党の政治資金問題などで、政治的な圧力が弱まり、やっと本来あるべき金融政策に戻すことを始めた。それが3月のマイナス金利政策と長期金利コントロールの解除であり、7月の政策金利0.25%への利上げとなった。

 8月5日の株式市場のクラッシュをみても市場の歪みの解消による影響は大きいことが窺える。しかし日銀は淡々と正常化を進めることでその歪みをなくすことが必要となる。

 トランプ氏のような政治的な圧力をかけるような人物が総裁となればリスクを助長させかねない。

 現在の総裁選の候補者には2人ぐらいそのリスクのありそうな人物がいる。自民党総裁選の行方も今後の日銀の金融政策に影響を与える可能性もあるため注意が必要となろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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