本当に当選するの、宝くじ … その抽選で不正は行われたのか?
この一か月、「抽選」に関する不正の疑いが複数話題になっています。一つはBIGと呼ばれるサッカーくじでの重複問題、もう一つは上記の記事にあるようにイベントチケットの抽選に関してです。BIGでの騒動とは、要はランダムに選ばれる数字の組を購入した人が、別な日に購入した数字の組がまったく一致してしまったというものです。この詳細については、ここでまとめられています。これは、もしその数字の組み合わせが、数学的に独立、かつランダムに選ばれていると仮定すると、確率的には有り得ないことです。ただ、これだけで「不正」が行われているとは言えません。なぜならばどのようにしてランダムな数字の組み合わせを選択しているのかは公表されていないからです。BIGの運営主体は、詳細な説明なしに、「不正は行われていない。公正な抽選である」ということを主張しています。
さて、もう一方のイベント抽選会ですが、こちらは大きな問題があるようです。最初から当選券とはずれ券を分けるのは良いとしても、店舗に配る際にその配分を恣意的に操作し、さらに当選券とはずれ券を十分に混ぜなかったと言っているのですから、不正を疑われても仕方ないでしょう。
公正なくじとは購入者が同じ条件であれば同じ確率で当選するものです。その条件はくじの発行者が決めるもので、通常くじの購入者が十分納得いくものでなければなりません。たとえば宝くじであれば地域によって当選する確率が異なっては公正とは言えません。逆に購入する金額によって当選する確率が変動しても納得するものです。当選しやすい番号だとか、当選しやすい宝くじ販売店舗というものは存在しないのです。もしそれが存在すれば公正な抽選ではありません。巷では一般に「当選しやすい宝くじ店舗」のように言われますが、そのような店舗は存在しません。「いや、実際に一等のくじを数多く販売している店がある」という人もいますが、それはくじの販売数が多いだけであって、当たりやすいわけではないのです。
また、確率的に考えるとBIGを含めて宝くじ関係は必ずしも当たりやすいものではありません。100円を宝くじに使ったとして、平均的に戻ってくる期待値、つまり当選する金額は20円から30円程度です。もともと宝くじの目的は自治体や政府等の公的な団体が資金を集めることなのです。宝くじを含めて「くじ」というものは、はずれることを考えて購入するものではなく、当たることを考えて購入することから、当たる意識のほうに大きくバイアスがかかり、期待値以上に期待するものなのです。
たとえば「サイコロを振って、1の目が出れば、3倍になって賭け金が戻り、それ以外は半分になる」というくじがあれば多くの人が購入することになるでしょう。しかし期待値を考えると、最終的には胴元(発売元)が儲かるのです。
冒頭で述べたBIGのくじですが、くじを購入する人は数字を選ぶことが出来ず、発売元から数字を与えられることになります。この数字は一つ一つの数字が数学的に独立で、さらに一つ一つの数字がランダムに選ばれる(与えられる)という条件では、同じ数字の組み合わせが重複することは有り得ません。確率的に有り得ないということです。しかし確率的に有り得ないということと、確率が0であるということは異なります。その確率は限りなく0に近く、例えば、地球上にある目に見えない、すべての「ほこり」を一つ一つ数えて、その一つを見つけ出すぐらいの確率です。しかし数字を選ぶ条件が公表されておらず、どのように公平さを担保した数字の選び方をおこなっているのかわからない以上、不正か否かは判断できず、販売元(胴元)を信ずるしかありません。それでも不正を疑うならば、購入をひかえれば良いのです。今まで明示した条件(具体的な番号の選び方を公表しない)に納得して購入したことになっているのですから。