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「お彼岸」に知っておきたい「お墓」のトラブル~お墓の「引き継ぎ」を争った裁判事例

竹内豊行政書士
今日は彼岸明け。そこで、お墓トラブルを防止するためにお墓の裁判事例をご紹介します(写真:アフロ)

2022年の秋のお彼岸は、9月20日(火)~9月26日(月)の7日間にわたって行われます。本日は彼岸明け(最終日)ということで今日お墓参りに行かれる方もいらっしゃると思います。

しかし、残念ながらお墓の引継ぎを巡って親族間でトラブルになってしまうことがあります。そこで、今回は、お墓を巡るトラブルを回避するために、裁判事例をご紹介したいと思います。

お墓は相続財産とは別ルートで引き継がれる

被相続人(亡くなった方)の財産については、相続人が引き継ぐのが原則です(民法896条)。

民法896条(相続の一般的効力)

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

しかし、お墓を代表とする祭祀財産(過去帳などの家系図、位牌・仏壇仏具・神棚・十字架などの祭具)については、例外的に相続とは別のルートで引き継がれます(民法897条)。(詳しくは、「お彼岸に知っておきたい「お墓」の相続~お墓は相続財産とは「別ルート」で引き継がれる!」をご覧ください)

民法897条(祭祀に関する権利の承継)

1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

祭祀を引き継ぐ者に「制限」はあるのか

民法897条は、祭祀財産を引き継ぐ者(祭祀承継者)を「祖先の祭祀を承継すべき者」(同条1項)とし、「権利を承継すべき者」(同条2項)とするだけで、特に祭祀承継者になることができる者の範囲を限定する文言はなく、また、人数についても限定していません。つまり、民法は祭祀承継者に制限を設けていません。そのため、だれが祭祀を引き継ぐかを巡る争いが起きてしまうことがあります。そこで、祭祀承継者を争った裁判例を見てみましょう。

祭祀承継者を巡った裁判事例

  • 「民法897条による承継者は、被相続人と親族関係があることや氏を同じくすることを必要としない」とした事例
  • 「祭祀を主宰する者とは、風俗習慣により定まるのであって、相続人とは限らず、また、相続人ではなければならないということもない」とされた事例
  • 「被相続人所有の祭具・墳墓および墓地を事実上管理・供養している被相続人の内縁の夫の孫が祭祀財産の承継者」と指定した事例
  • 被相続人の実の妹で成年被後見人である申立人が、祭祀財産に申立人を指定するように求めた事案について、「申立人以外の近親者が祭祀承継者になることについて積極的ではなく、申立人は以前から被相続人と親しく交際し、被相続人が生前に申立人と同じ墓への埋葬を希望していたことなどから、申立人を祭祀承継者と定めるのが相当である」とした事例

以上の裁判例から、祭祀財産を承継するのに、事実上最も適した者であれば、祭祀承継者に特に制限は設けられていないと考えることができるでしょう。

祭祀承継者で不安がある方の対処法

祭祀承継者の座をめぐる争いは、原因が感情的な問題が強いため「骨肉の争い」になってしまう場合があります。

もし、祭祀財産をお持ちで、ご自身の死後に祭祀承継者を巡って紛争が起きる懸念が払しょくできない方は、祭祀承継者を指定してみてはいかがでしょうか。祭祀承継者に指定された者は、前掲の民法897条第1項ただし書きによって、最優先で祭祀承継者となることができます。

なお、民法は祭祀承継者の指定方法は決めたいません。したがって口頭で伝えてもかまいませんが、それでは証拠が残りません。祭祀承継者を指定する場合は、たとえば「祭祀承継者に長男・山田太郎を指定する」といったように、遺言で行うのがベストでしょう。

さて、本日は昨日と打って変わって全国的に天気はよいようです。お墓参りに行かれる方は気を付けてお出かけください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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