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JASRAC、メタバース内での楽曲使用に関するガイドを公表

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:アフロ)

個人的には「メタバース」の話題を聞いても以前ほどときめかなくなってしまいました。現在のフォームファクターのHMDが必要とされる限り、キャズムは越えないのではと思ったりもします。とは言え、VTuberのように仮想空間の中で現実世界とは違う自分を表現する行為が広がりつつある中、長い目で見れば「メタバース的」なトレンドは続いていくものとも思います。

さて、昨年の12月にJASRACが「メタバースでの音楽利用について」というリリースを出しています。メタバースで行うバーチャルライブなどでの音楽利用についての問い合わせが増えていることに応えたとのことです。

基本的な考え方としては、「メタバース」だから何か特別な要素があるというわけではなく、通常のネット上でのストリーミング配信における音楽利用と同じであり、それに準じた著作権許諾の処理と利用料金の支払いが必要ということになります。

JASRACのリリースでは、メタバース内でのバーチャルライブ、および、メタバース内の店舗でのBGMの2例(いずれも商用目的)が紹介されています。

バーチャルライブは通常のストリーミング動画配信と同等であり、利用料は、営利目的であれば、月間の情報料および広告料等収入の2.1%(最低使用料5,000円)です。外国曲や収録映像を使用する場合は別途「ビデオグラム」の権利処理が必要になりますが、音楽出版社の指し値を支払う必要があるので、一気にハードルが高くなります。また、これは、メタバースに限った話ではないですが、CD音源やカラオケ事業者が制作したカラオケ音源等の他人が作った音源を使用する場合は、著作隣接権の許諾処理が必要になるので、これまたかなり大変なことになります。

メタバース内の店舗でのBGMは通常のストリーミング音楽配信として扱われます。さすがに、現実世界のBGMのように店舗の席数に応じた月額料金(安め)といったことにはなりません。利用料は、営利目的の場合、月間の情報料および広告料等収入の3.5%(最低使用料5,000円)となります。著作隣接権の権利処理が必要な場合については前記と同様です。

JASRACが挙げた2例はいずれも営利目的の場合(典型的にはメタバースプラットフォーム提供者が音楽を利用する場合)であって、UGC(CGM)的にユーザー自身がメタバース内で営利目的でなく音楽を流す場合はまた別です。この場合の料金は、通常のストリーミング動画配信またはストリーミング音楽配信と同等(そんなに高くないです)になるものと思われますが、営利/非営利の境目等微妙なポイントも多いのでJARACにお問い合わせください。

最終的には、メタバースプラットフォーム提供者が、YouTube、ニコニコ動画、Facebook等と同様にJASRACと包括契約を結ぶことで、エンドユーザーとしては著作権の許諾手続を気にする必要はなくなる(楽曲の利用料はプラットフォームがまとめて支払ってくれる)ことが理想なのですが、これはもう少し先の話になりそうです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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