北朝鮮で就寝中の死亡が多発「気づいた時には手遅れ」
本来、北朝鮮では11月の中旬から本格的な冬に入るが、予報通り暖冬となり、平壌では11日、雪ではなく雨が降った。一方、北部では平年より暖かいとはいえ、最高気温は氷点下にとどまり、かなりの量の雪が降った。
今後は急激に気温が下がる。韓国気象庁によると、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の18日の最低気温は氷点下29度だ。そんな恵山では、一酸化炭素の中毒事故が相次いでいる。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
今月3日、市内の駅前洞(ヨクチョンドン)に住む30代の新婚夫婦が、一酸化炭素中毒で死亡した。その翌日には、同じ町内の別の家でも、夫婦が一酸化炭素中毒で死亡した。5歳の娘も意識を失っていたが、恵山市病院に運ばれ治療を受けている。
別の情報筋によると、市内の恵明洞(ヘミョンドン)で今月初め、70代の老夫婦、4人家族がそれぞれ別の家で死亡するなど、一酸化炭素中毒による痛ましい事故が相次いでいる。
いずれの家も、燃料として練炭を使っていた。
北朝鮮の多くの地域では、燃料として練炭を使っているが、両江道や慈江道など北部山間地では薪が主に使われてきた。安くて暖かいからだ。
金正恩総書記が進めている植林事業により、無断伐採への取り締まりが強化され、以前のように薪の切り出しはできなくなっていた。ところが、情報筋はこう説明する。
「かつては薪が燃料だったが、今じゃ山はすべて丸裸」
禁止されているはずの薪の切り出しが行われているのだろう。そこで、練炭が多く使われるようになり、中毒事故が多発しているということだ。
事故の多発を受けて、恵山市安全部(警察署)は、各町内の練炭を使う家の見回りを行っている。このような原始的な方法が最も効果的だ。
(参考記事:「焦げ臭い匂い取り締まり班」の活動を妨害する知人の犯罪)
また、警報機を設置せよとも命じた。とは言っても、単なるベルだ。一酸化炭素を吸って意識が朦朧となったら、チリンチリンとベルを鳴らして近所の人に助けを求めよということだ。
だが、そんな話を聞かされた住民は「ありえない対策」だと鼻で笑っている。一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには体が動かなくなっており、ベルを鳴らす余裕すらないという。
別の情報筋によると、安全部は換気に気をつけるように注意して回っている。しかし、隙間風が入ってこないように窓はビニール幕で覆っているので、換気しようにもできない。
豊かな平壌の市民は、27ドル(約3830円)もするガス警報器を購入、設置している。さらに裕福な人は、床下に韓国製の塩ビパイプを設置し、ボイラーで沸かしたお湯を部屋中に循環させるが、恵山に住む人々の中で、そこまでの余裕がある人は一握りだ。
練炭ではなく、薪を使うのが安全だと情報筋は語るが、そもそも手に入らない。中毒死の恐怖と闘いながら過ごす夜が、雪解けまで続くだろう。