MLBロンドンシリーズ観戦記「残念すぎる試合展開とハンパないリトルアメリカ感」
現地滞在2日間の弾丸旅程で、レッドソックス対ヤンキースのロンドンシリーズを観戦した。大観衆の盛り上がりと残念すぎる試合展開、そして世間の無関心、これが印象だった。
今のMLBの悪い点が全て出た?
両試合の結果はすでにご存知の通り。ヤンキースの連勝だったが、ともに空前の乱戦だった。記念すべき初戦は、リック・ポーセロと田中将大、2人の先発投手がともに1回持たず。初回の表裏だけでほぼ1時間を要した。結局17対13というラグビースコアで試合時間はなんと4時間42分。9イニングスでは史上3番目に長い試合だった(ちなみに最長と2番目も、2006年と07年のこのカードだ)。12対8だった翌日も4時間を軽く超えた。時差ボケの体には堪えた。
英国のそして欧州のファン開拓のためにベースボールの醍醐味を届ける、という使命を担ったシリーズだが、ゲームの質という観点では悲惨というしかない。
2試合で計50得点、のべ31投手が登板した結果としての長すぎる試合時間、多すぎるイニング間の投手交代、長い投球間隔と四球の連発、狭い球場による安っぽい本塁打、ブルペンの崩壊と、今季のMLBの悪い部分が全て出た展開だった。
リトルアメリカ
しかし、場内は終始盛り上がっていた。
セブンスイニングストレッチは当然として、グラウンド整備員によるYMCA、アトランタ名物の快速男「フリーズ」の疾走などのアトラクションが行われた。8回には「スウィート・キャロライン」を大観衆が合唱し、ゲーム終了後には「ニューヨーク・ニューヨーク」が流れた。もうメジャーがてんこ盛りで、旅行者や在英のアメリカ人主体?の観客は大喜びだった。場内の盛り上がりに身を任せていると、この国にもベースボールはすでに根を下ろしているような錯覚に襲われそうになった。
世間の関心は?
しかし、アメリカの魔法から覚めた翌日、帰路の空港で地元紙を買い漁ると「タイムス」にも「デイリー・テレグラフ」にも、そして大衆向けの「サン」にも歴史的なベースボール興行に関する記事は残念ながら皆無だった(電子版は取り上げていた)。スポーツページは、クリケットやサッカーの女子W杯、さらには直前に迫ったテニスのウィンブルドン大会のプレビューなど、英国人好みの競技で占められていた。
だからと言って、今回のシリーズは新規のファンの開拓には繋がっていない、と批判することは的を射ていない。市場の開拓は一朝一夕に成し遂げられるものではない。今回はまず第一歩を踏み出した、ということに意義があるのだろう。そう考えれば、極めて高額なチケット(ぼくの席は、両試合ともファウルポールそばの「ほぼ外野の内野席」だったが、発券手数料込みで1試合290ポンド=約4万3000円もした)を2試合で約12万枚も売りさばいたことを高く評価せねばならない。これで確実に次回開催の目処が立ったのだから(すでに来年のカブス対カージナルス戦の開催が発表されている)。
<写真は全て豊浦彰太郎撮影>