旧統一教会への第7次集団交渉の申し入れにより被害総額46億円超に 被害の声は今後も上がると予想される
長年にわたって組織的に行われてきた、旧統一教会による高額献金や物品を購入させられる被害はいまだ深刻な状況で、充分な回復はなされていません。
全国統一教会被害対策弁護団は教団に対して、これまで6回の集団交渉を申し入れてきましたが、2月28日に行われた司法記者クラブの会見にて、さらに第7次集団交渉の申し入れの通知を行い、同日には第5次から第6次までの集団交渉を行った30名による、8億5000万円を超える第2次の集団調停を東京地裁に申し立てたことも併せて報告されました。
被害総額は46億円を超える
同弁護団団長の村越進弁護士は「第1次、2次の集団調停の件数は129件、被害者は139名で、被害総額は44億円を超えることになります。さらに本日、統一教会に対し損害賠償請求を求める第7次集団交渉の申し入れを発出いたしました。被害者は18名で、被害金額は2億3400万円超になり、7次までの集団交渉を行った被害者の数は159名、被害総額は46億円を超えます」と話します。
第2次の集団交渉の申し立てを行った理由として、阿部克臣弁護士は「統一教会側の対応が非常に不誠実であるために、話し合いの土俵を裁判所に移し、裁判所の適正な管理の下で迅速な解決をはかることを最大の目的としている」といいます。
「弟が井戸から登ろうとして爪を立てるが、爪がはげて苦しんでいる」
続いて、旧統一教会に対して送付した第7次集団交渉についての説明もあり、特に悪質な被害ケースとして「高校生という未成年の時に、正体を隠して勧誘されて、進学や就職の機会を奪われて40年近くもの年月を旧統一教会に費やして、人生を奪われた」元女性信者のケースや「父親の弟の交通事故死を教会に伝えたところ『弟が井戸から登ろうとして爪を立てるが、爪がはげて苦しんでいる』『これは先祖の因縁であり、さらに悪いことが起こる』などといわれて高額な献金や物品を購入させられた」事例をあげます。
「7次の集団交渉における被害の特徴としても、これまでと同じように、被害者の悩み、苦しみにつけ込まれて、献金すれば先祖が救われるとか、地獄に落ちないなどと、恐怖心や不安をあおるような話をされて、お金を出させられるケースがほとんどです」(阿部弁護士)
教団に対して、被害者の非常に許せない強い思い
この他にも「幼い娘の疾患が判明したところ、旧統一教会からは『先祖の因縁が娘に降りてきている。娘を救うには、その因縁を晴らさなければならない。そのためには、命の次に大事な財産をささげなければならない』といわれて、長年にわたって繰り返し献金をさせられた」という事例もあります。
こケースについて、木村壮弁護士は「この方(第7次集団交渉に参加している元信者)も被害に遭っていますが、ご自身のお母さんも誘ってしまっています。お母さんは今回の集団交渉には入っていませんが、1億を超える献金被害があり、晩年はお金がない状態でした。さらに、お母さんにとっては子ども、今回の通知人にとっては兄弟になりますが、その方が病気になってしまった時に、お金が全く出せないということで、家族全員がとても苦しみました。ご自身は今も苦しんでおり(旧統一教会に対して)非常に許せない強い思いを持っていらっしゃいます」と話します。
こうした苦しみや憤りを抱えている元信者やご家族の方は多いことだと思います。
旧統一教会と縁を切って、闘うということへのハードルの高さ
村越団長は「(第7次までの集団交渉について)かなりの人数、被害額だとは思いますが、統一教会による全体の被害を考えた時に、これはごく一部に過ぎないと考えています。被害者の方が統一教会と縁を切って、闘うことのハードルがいかに高いかを痛感しています」と話します。
そのハードルを少し下げる意味で、昨年12月13日に特定不法行為等被害者特例法が制定されたともいいます。
「この特例法によりますと、被害者が統一教会に対し損害賠償請求を求めるための交渉や訴訟を行う場合には、その着手金や訴訟費用などは法テラスが立て替えて援助することになります。依頼者の財産・資力を問わないため、どなたでも利用できます。立て替えではありますが、自腹を切って費用を負担しなければ(教団との)闘いを始められないということはなくなります」として、これまで費用面から声を上げられない人たちの助けになるとしています。
今後、被害者のメンタルサポートをどのようにしていくのかが問われていく
同特例法は3月19日までに施行されますので、すべての財産を奪われて、お金がないために、これまで被害を口にできなかった人たちが、その声を上げられる環境が整ってきています。
7次までの集団交渉の統計をみると、159名のうち、元信者の人数が122名に上っています。これまで押し黙ってきた人たちが確実に被害を訴えてきていることがわかります。特例法が施行されれば、さらに多くの人たちが声を上げることにつながることが予想されます。
しかし教団と決別をして交渉や訴訟をすることは容易ではありません。それだけに、元信者を始めとした被害者のメンタルをどのようにサポートしていくのか。それが今後、より問われていくことになります。