Yahoo!ニュース

カンセコ氏が現在の殿堂入りのあり方にラジオ番組で反論

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ステロイド時代を代表する選手の1人カンセコ氏が殿堂入りのあり方に異議を唱えた(写真:ロイター/アフロ)

日本時間の19日午後3時過ぎに、エンゼルスの試合中継を担当するAMラジオ局KLAAのエグゼクティブ・プロデューサー、ジェームス・アレン氏からメールが届いた。

内容は同局の番組に出演したホゼ・カンセコ氏が、2017年の殿堂入り選手の発表を受け、現在のステロイド時代の選手を巡る殿堂入りのあり方について異論を訴えたということで、彼の意見をまとめた音声ファイルを送ってきてくれたものだった。

カンセコ氏といえばステロイド時代を象徴する選手の1人で、MLB在籍17年間で通算462本塁打を放つ活躍をする一方で、自ら禁止薬物の使用を明らかにするともに、MLB界に蔓延していた禁止薬物使用の実情を暴露する本を執筆するなど、2005年に実施された下院公聴会にも証人の1人として出席した過去を持つ人物だ。

送られてきた音声ファイルは全部で3つあり、それぞれの内容は以下の通りだ。

「PED(ステロイドをはじめとする能力向上薬物のこと)が各個人にどんな効果をもたらし、どこまで選手のパフォーマンスに役立つのか誰にもわからない。また自分には一卵性双生児の兄がいるが、彼も自分と同じ練習をして同じPEDを使用したが、彼はMLBに定着できなかったし、462本の本塁打も放っていない。PED使用ばかりに注目されてしまい、選手の能力を正当評価されていない」

「これまでPED使用が疑われた多くの選手が殿堂入りを拒まれる一方で、MLBが薬物検査で陽性になっているのを把握している選手たちが殿堂入りを果たしている。自分にはまったく理解できないし、現在の投票システムが偽善極まりないことを証明している」

「選手個人の話をするつもりはないが、過去にPEDを使用して検査でも陽性になっている選手がすでに殿堂入りしている。その一方で使用を疑われたスーパースター達が様々な情報を元にしながら使用の事実が認定していないのにも関わらず、今も殿堂入りできていない。私にはまったく理解できない。なぜバグウェルが殿堂入りできてマーク・マグワイアができないんだ」

このカンセコ氏の発言は、ある意味正論と言わざるを得ない。現在に至ってもステロイド時代の全貌が明らかになっていない以上、マグワイア氏やバリー・ボンズ氏、ロジャー・クレメンス氏などの薬物使用疑惑が表立った選手たちがスケープゴートにされ、それ以外の選手たちがお咎め無しで実績次第で殿堂入りできるというのは説得力に欠けるだろう。

今回の投票結果を見る限り、ボンズ氏やクレメンス氏が投票5回目で過去最高の得票率を得るなど、全米野球記者協会の記者達の認識が変化してきているのは間違いない。

だがステロイド時代の解明がほぼ難しい状況にあることを考えると、カンセコ氏の不満を解消できる日は当分訪れることはないのだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事