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ネット記事は最後まで読むべきなのか?

田代真人編集執筆者
(写真:アフロ)

先日、朝日新聞が『グノシー、悪質な「釣り記事」排除へ 読者の満足度などから掲載判断』という記事を報道した。釣り記事は「クリックベイト」とも呼ばれ、昨今のフェイクニュース騒動でFacebookなど世界中で対策が講じられようとしている。グノシーもタイトルだけでクリックを誘導し、期待外れの内容や偽った内容でページビュー(PV)を稼ぐことだけを目的としたサイトを排除しようとしている。

そのなかで気になったのが、その方法だ。より詳細に報道されているINTERNET Watchの記事によると、グノシーはクリックベイトの配信を減らすために新たにアルゴリズムを開発して事前にクリックベイトと判断して掲出を減らすことを目指しているようだ。

グノシーは、アルゴリズムを開発するうえで、「滞在時間」「スクロール速度」「SNSシェア数」などのユーザー行動をテストしたが、滞在時間が長いからといって満足度が高いわけではなかったとのことだった。

それはその通りで、滞在時間はユーザーそれぞれの読む速度にも違いがあるだろうし、文章が最後まで読まれたからといって満足するわけではないことはテストなどしなくてもわかりそうなものだ。

そもそも各々文章の違いなどは考慮されているのであろうか。つまり、報道ニュースやコラム、エッセイなどそれぞれの文章には特徴があり、その違いによって読まれ方も異なるのである。

代表的な例は、新聞記者の書く報道ニュース、記事である。新聞記者は、ながらく紙面を意識した記事を書いてきた。いまもそうだ。その特徴は最短見出しだけで中身がわかること。リードと言われる見出しの脇に添えられる文章でも内容がわかる。もっといえば記事の最初の段落ですべてがわかるように書かれているのである。

たとえば、今回のグノシーの報道記事を朝日新聞から引用してみよう。

グノシー、悪質な「釣り記事」排除へ 読者の満足度などから掲載判断

ニュースアプリを運営するグノシーが、「あの野菜に思わぬ効果が!」といった思わせぶりなタイトルで期待をあおり、中身がともなわない「釣り記事」への対策に乗り出す。記事ごとに読者に「満足している」「気に入らない」などの評価をしてもらう仕組みを、6月から導入。悪質な記事で不満を持った読者が離れるのを防ぐ。

ニュースアプリやSNSは新聞社、ネットメディアなどから記事の提供を受ける。グノシーでは約600媒体から1日に配信を受ける数千本の中から、人工知能(AI)がどの記事を載せるか選んでいる。見出しは配信側が付けたものを使っている。

AIは各媒体の影響力や、SNSでシェア(共有)された数など複数の要素で判断する。ただ、タイトルが目立つ記事は、中身を読まずSNS上でシェアする人も多い。タイトルに見合う内容の記事と、配信者がクリック数を稼ぎ広告収入を得ようとする「釣り記事」の境目はあいまいで、今のAIで見分けるのは難しいという。

グノシーは、満足度に加え、記事が最後まで読まれた割合などをもとに、釣り記事を見つける考え。将来的にはAIで釣り記事を排除できるようにする。開発担当者は「ニュースアプリの質を保つための手を打つ」と話す。

フェイスブックも昨年から、「××した驚きの結果!」といった釣り記事によく使われる文言をAIが見つけ、スタッフが実際に記事を確かめるようにした。(奥田貫)

出典:朝日新聞東京本社 2017年4月28日朝刊

この記事にはリードがないが、見出しから文章まで段落でわけて読んでみるといい。最初の段落に、ほぼほぼいわゆる5W1Hが含まれているので、どの段落でも途中で読み止めても内容がわかる。

新聞は、印刷所から遠い地域に配達するために遠い地域にいくほど記事の締め切り時間が早い。早い版から12版、13版、14版となる(読売新聞の例)。都心に近いほど最新のニュースが入るが、場合によっては、12版でトップ記事だったものがそれ以降により大きなニュースが飛び込んでくると、ベタ記事と言われる小さな記事へと縮小されることがある。

そのときに、整理部と言われる部署の記者が短時間で文章を短くすることができるように、文章の後ろから段落ごとに削除しても記事として通じるように工夫されているのである。

通常のコラムやエッセイではこうはいかない。つまり、新聞記事から転用されたネット記事は、急いでいるときは見出しだけや最初の1段落だけ読めばいいのである。それで目的が達せられる。最後まで読む必要がない。「滞在時間」とは関係なく、結果的に読者にとって非常に効率的に作られた記事となっている。

ことごと左様に文章にはその目的によって違いがあるもの。これをアルゴリズムでどのように見分けるのか。グノシーの担当者も言うようにAI技術の進化なくしては難しいであろう。とはいえAI技術が進化して解決するのかどうか、その点にも注目していきたい。

編集執筆者

1963年福岡県出身。86年九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、2007年メディア・ナレッジ設立。代表に就任。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「コミュニケーション」「編集論」。

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