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オイルショックから50年、日本の石油の中東依存度は過去最高水準、中東情勢緊迫化でショック再開リスクも

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 イスラエル軍は14日、ガザ地区北部の住民に対し南部に避難するよう通告する一方で、ガザ各地に空爆を続けていて、ハマスもイスラエルに向けたロケット弾による攻撃を繰り返している。イスラエル軍はガザ地区への陸、海、空からの作戦を準備しているとしていて、大規模な地上侵攻の可能性が高まっている。

 イスラエルが絡んだ中東の本格的戦争となれば1973年の第4次中東戦争以来となる。第4次中東戦争といえば、これをきっかけとしたオイルショックを思い浮かべる人も多いのではないかと思う。今年10月はこのオイルショックからちょうど50年目にあたる。

 1973年10月、イスラエルとアラブ諸国による4度目の戦争となった第4次中東戦争が始まった。石油輸出国機構(OPEC)のメンバーであるサウジアラビア、イランなどペルシャ湾岸6か国が原油公示価格を70%引き上げた。さらに中東戦争の敵国イスラエルとその支持国に対する石油供給抑制を狙いとして石油採掘の削減と同国を支援する米国やオランダに対して石油の禁輸を決めた。

 石油資源の大半を輸入に頼り、その多くを中東地域に依存していた日本経済にとって大きな打撃となった。

 石油価格は一気に4倍となり、卸売物価が前年比30%、消費者物価指数は前年比25%もの上昇となった。これがオイルショック(石油危機)である。

 この異常事態に対して、財政・金融両面において極めて強力な総需要抑制策が実施された。公定歩合は1973年中に4.25%から9.00%に引き上げられた。そして1973年度の国債発行額は2兆円台を突破しました。需給ギャップは拡大し戦後初のマイナス成長となったことで、いわゆるスタグフレーションに陥った。

 税収は大幅に減少し、国債は増発され続けた。1975年には個人消費・設備投資が停滞、輸出も不振となり、企業・家計の所得が伸び悩む。しかし、物価がやや落ち着いてきたこともあり、金融政策は徐々に緩和され、景気浮揚のために公共事業や住宅建設などの景気対策が取られた。ただし、民間需要の落ち込みにより効果は限られ、税収等の減少は3.6兆円にも及んだ。

 この年の歳入・歳出の差額を補うために、補正予算が組まれ、3兆4800億円の国債が増発された。このうち2兆2,900億円が「特例国債」により賄われ、1965年以来、10年ぶりの赤字国債の発行となった。

 ちなみに、2022年7月の日本の原油輸入における中東依存度は過去最高の98%を記録していた。現在の日本の原油輸入のほぼ全てを中東に頼る形となっている。

 13日のニューヨーク市場では中東情勢の緊迫化で地政学リスクが高まるなか、WTI原油先物価格は一時、前日比約6%高い1バレル約87.8ドルと約1週間ぶりの高値を付けた。1日の値動きとしては異例の大きさとなっていた。

 この状況下で、もしオイルショック時のようなことが発生したら日本はどうなるのか。すでに物価が上昇しているなかにあって、日銀は意地でも強力な金融緩和策を続けている状況下、あまり想像はしたくない気がする。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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