東京オリンピック・パラリンピックで進んだ東京メディアセンターのDX化とその未来
東京オリンピックが閉会し、パラリンピックが開会しました。オリンピック・パラリンピックが始まる前から、誰もが思っていたことだとは思いますが、東京オリンピックは、選手側からのSNSやYouTubeの情報発信が盛んな大会だったと記録されたかと思います。
なにしろ、選手からすれば、基本無観客試合ですから、自分のお客さんの反応はSNS上で味わうしかないでしょう。この傾向はパラリンピックでも変わることはないでしょう。
また、オリンピックで印象的だったのは、海外からの記者のみなさんが日本のコンビニとそこで扱っている食品をどんどん発見していく様子がSNSで広がりを見せていたことです。メディアの記者も仕事をしなければいけない上に、行動制限されているとなると自然と日本ではコンビニを利用することになるわけです。
異例尽くしの東京オリンピックでしたが、SNSがこれだけ普及していたことで、正直救われた部分はあったと思います。選手村の様子がこれだけ詳細に知ることができるのも、SNSのおかげであったと言っていいでしょう。
そんな中、これまでオリンピック・パラリンピック報道の中心となってきたメディアセンターも変化しています。そして、メディアセンターといっても、組織委員会のメディアセンターと開催都市のメディアセンターである東京メディアセンターがあります。
役割も場所も違う両者ですが、大会期間中に東京メディアセンターにお邪魔してお話を聞くことができました。そこでは、コロナ禍をきっかけとしたデジタル対応が進んでいました。
ー コロナ禍で無観客の開催となって、東京メディアセンターにどういった変化がありましたか?
まずはアクレディテーション(参加権)の登録・発行や管理に着手しました。理由は2点。まずは、アクレディのもろもろの手続きからアナログな要素を排除することでした。これはコロナ禍で必須となりました。
もう1つは、これまでの常識が通用しない大会になったため、事前登録と実際の発行の歩留まりがまったく予想がつかなくなったためです。この問題も、アナログなパスの発行をなくすことで解決ができました。
ー 他にもアナログからデジタルにシフトした要素はありますか?
東京メディアセンターでは、メディア向けに情報発信や場所を提供するだけではなく、東京という場所を伝えてもらうためのコンシェルジュとしての機能もあります。それを今回は、すべてオンラインで対応する形に変更しました。
また、東京メディアセンターからのニュースレターでは毎日東京都の新型コロナの患者発生状況をお知らせしており、こちらもいい反応をいただいています。
ー デジタル化を進めたとはいえ、東京メディアセンター自体はメディアのための場所として使われていると思うのですが、そこでも変化はありましたか?
もちろん、東京メディアセンターは新型コロナの感染対策はしていますが、これまでのように東京メディアセンター自体に、記者のみなさんがつめかけて記者ブースが満席になるというようなことはありません。
ただ、予想外であったのは、この東京メディアセンターの展示ブースをそのままライブ配信などを撮影する場所として使う人たちが出てきたことでした。
ー たしかに海外から記者のみなさん全員が撮影のための場所を確保できているわけではないですもんね
コロナ禍での開催ということで、記者のみなさんにも行動制限がかかっています。じゃあ、ホテルの一室からライブ配信するのだと、あまりにも味気ない。そんな中で、結果的に場所として使う人が減ってしまったことで、東京メディアセンターという場所が撮影ブースのように機能したことは意外な結果でした。
今後、ますますスマホだけでライブ配信するなんてことが、海外メディアを中心に増えてくると、こういった撮影ブースとしてのメディアセンターというのもあたらしい姿として計画に入れるべき要素になっていくでしょう。テレビ取材だけが、映像を出すための取材である時代はとっくに過ぎています。
いろんなことがデジタルだけで完結する時代だからこそ、アナログ的なサポートの姿が変わっていく。それは今回のような異例な対応が続く大会だからこそ見えてきたあたらしい姿と言えるでしょう。