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Colaboに対して「大量脱税」などと投稿 「音無ほむら」名乗る男性に合計385万円の支払命令

小川たまかライター

 自身の運営するニュースサイトやSNSで、一般社団法人Colaboや、代表の仁藤夢乃さんについて「大量脱税」「税務署が来るのは確実と思うわ」などと投稿した男性に対してColaboが合計660万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(片山健裁判長)は9月24日、男性に合計385万円(仁藤さんに220万円、Colaboに165万円)の支払いと、投稿の削除を命じた。

 男性はニュースサイト「エコーニュース」を運営する江藤貴紀氏で、X上では「音無ほむら(@echonewsjp)」のアカウントで発信を行っている。

 6月に行われた本人尋問で江藤氏は、自身の代理人弁護士からの主尋問で「(大量脱税という見出しの記事は)Colaboが脱税をしたという意味ですか?」と聞かれ、「いえ、そうではありません」「可能性があることを明示したものです」と答え、「これまで(Colaboを)取材したことは?」という質問には「はい、5〜6回問い合わせフォームからメールを送りました。一度も回答はありませんでした」と答えていた。

(本人尋問についての詳細記事→)6月4日、東京地裁

 判決は8月に行われる予定だったが、約1カ月延期されて今日の言い渡しとなった。

 江藤氏とColabo間では、江藤氏が「デマの捏造者」「古参のストーカー」というColabo弁護団の会見での発言を訴えており、こちらの訴訟も継続中。Colabo弁護団は、「デマ捏造者」は別の男性(Colaboに敗訴し控訴中の「暇空茜」氏)を指したものであり、たとえ江藤氏のことであったとしても事実に反しない、「古参のストーカー」については事実であり名誉毀損にも当たらないと主張している。

※以下、9月24日22時15分追記

判決後、東京地裁前で
判決後、東京地裁前で

「大量脱税」「詐欺」「ゆめにゃんの擬似フェラ画像」などと投稿

 江藤氏は、「エコーニュース」や、YouTubeの「えこーにゅーす・チャンネル」の中で、仁藤さんが講演料を騙し取ったり、Colaboが「大量脱税」を行ったりしたかのような発信を行っていた。江藤氏側は意見論評に過ぎず、事実の摘示を行ったものではないなどと反論したが、裁判所は「疑問系の形式をとりつつも脱税の事実を摘示したとみるのが自然」など、事実の摘示と認定した。

 さらに、江藤氏の発信を裏付ける的確な証拠がないことなどから、真実または真実であると信じたことに相当の理由があるとは認められないと判断。名誉毀損を認定した。

 このほか、江藤氏はフランクフルトを持った仁藤さんの写真を添付して「ゆめにゃんの擬似フェラ画像」「仁藤夢乃氏が、食品で擬似口腔性交した自撮り画像」などと投稿していた。

 この点について判決文では、「本件写真は(略)宮城県の加美農業高校の文化祭を訪問した際に撮影され」「性的な意図を持って撮影されたものでないことは(略)明らか」とし、さらに以下のように江藤氏の行為を違法な侮辱行為と断じている。

「本件各ツイートには、被告の主張するような、原告仁藤の言説に一石を投じる意図をうかがわせる記述は見当たらず、むしろ、他の閲覧者の歓心を買おうとする記述も用いられていて、被告は、敢えて原告仁藤を性的に揶揄する意図の下で、本件写真に卑猥な文言を加えて本件各ツイートをしたものとみるほかない。」

「原告仁藤はこれまで性加害等に反対する立場から10代の若い女性を支援する社会活動を行っており、本件各ツイートは、このような原告仁藤の立場を貶める目的で投稿されたものであることが優に推認されるのであって、原告仁藤の活動にも支障が生じ得るものと認められる。また、原告仁藤は、本件写真を写真共有ソフトに投稿したとは認められるが、被告が本件写真を公表することには同意しておらずさらに、現在における原告仁藤が、社会活動家として一定の社会的地位を有することを考慮しても、上記のような性的な意図を加えた形で本件写真を公表することが許容されるものでもない。」

 判決後に行われた記者会見で、Colabo代理人の神原元弁護士は「脱税とか詐欺であるとか、知的障害を持つ人を勧誘して巨額の利益を得ているとか、まったくのでっち上げでまったくの名誉毀損だと裁判所は認定しています」と説明。「判決を高く評価しています」と話した。

手作りのお祝いを「1万円の和牛コース料理」と疑う

 仁藤さんは、江藤氏が「2021年に女子のお祝いとして1万円の和牛コース料理を仁藤夢乃氏と稲葉隆久氏が食べたことが疑われる写真があるわ」「『支援対象者のお祝いだから』と言って1万円オーバーの食事をしていた、一部の役員に利益を与えた、となる可能性があるの」などと動画で述べていたことについて、「(支援している少女の)誕生日のお祝いでお店に行ったわけではなくて、スーパーで買ってきたお肉をお重に詰めて、お店みたいに装って、『1万円松コース、料理長仁藤夢乃』と書いたメニュー表を作って食事を提供した、思い出の写真だった」と振り返った。

記者会見する仁藤さんと神原弁護士
記者会見する仁藤さんと神原弁護士

「(少女たちも)自分たちにとって大事な思い出の写真、時間をデマに利用されたと、本当に傷ついていたし怒っていました。彼女たちも反論したいと言っていたけれど、SNSでデマを拡散したり便乗する無数のアカウントは、どんな少女が保護されているのかを探っていたので、少女たちにそういう投稿をしないように言っていました」(仁藤さん)

 また、江藤氏側が裁判で「意見論評であって事実の摘示ではない」と繰り返した点については、「意見論評であって、脱税だと自分が信じて述べたわけではないと。極めて卑劣な態度だと思っています」(神原弁護士)、「SNS上では『脱税だ!』という雰囲気で投稿しながらも、裁判に出てくるとはぐらかすような姿だった」(仁藤さん)と話した。

裁判を通しての感想

 江藤氏はフランクフルトの画像以外にも仁藤さんの水着の写真を保管、SNSにアップし「ゆめにゃん、消して欲しいなら消すわよ」などとツイートしていた。

 江藤氏が「古参のストーカー」などの発言についてColabo弁護団を訴えている訴訟の本人尋問(7月8日)でこの点を問われると、「仁藤さんは性的な表現について規制を求めるようなフェミ発言を2014年頃から行っていたが、その3年前の2011年には自分で水着の写真を公開していた」などと述べ、これを示すための発信だと主張した。

 フランクフルトの写真については、仁藤さんが「加美農業高校 たまげ大福だ・・・」とキャプションをつけ、写真投稿サイトに投稿していたもの。「たまげ大福」とは、Colaboが協力して被災地の高校生と開発した商品「たまげ大福だっちゃ」のことで、仁藤さんはこの販売活動のために2011年に加美農業高校の文化祭を訪れていた。

 このキャプションがあることから、「被災地支援の商品だとご存知だったんでしょ?」と神原弁護士から聞かれた江藤氏は、「仁藤さんは下ネタが多いので、『たまげ』とはキンタマの毛という意味で言っている」と答え、傍聴席をざわつかせていた。

(7月8日の傍聴記事、詳細→)7月前半の取材

 江藤氏の中で、独自の「仁藤さん像」が作られていると感じた。

 江藤氏は判決の前日にも、被災地支援で能登を訪れた仁藤さんの投稿を引用して「なんだかまるで『掻き入れ時』で頑張ってるふうな感じしちゃうわよ!」「ゆめにゃん、やっぱり豪雨の被災地で笑ってる」などと投稿していた。これらの投稿は数百から数千回、再投稿され、拡散されている。

 また、判決後には「東京地裁でのColabo訴訟、判決を受けてご寄付を募ります!」「385万円の賠償を跳ね返します!」などと投稿し、寄付を募っている。

 仁藤さんが会見で話した通り、江藤氏は本人尋問では「可能性があることを明示したもの」などと逃げ、結果的に「大量脱税」「詐欺」などすべてについて根拠ある主張はなされなかった。本人尋問に出席するだけ果敢だが、カンパする人が願う「跳ね返し」が控訴審で期待できるとは思えない。

 民事訴訟で勝訴判決が出ても、ネット上での誹謗中傷は続く。385万円の支払命令は高額だが、江藤氏側はこれまでにカンパなどで2000万円以上を集めたと投稿しており(※)、判決が抑止になるどころか次のカンパを集める理由になってしまっている。大きな問題だと感じる。

(※)2024年7月2日に江藤氏は「*個人宛のカンパ、note、アマギフ等と合わせて2000万ぐらいザッと入って出た計算よ?」と投稿している。

(記事内の写真はすべて筆者撮影)

(引用したツイートは原文ママ)

訴訟対象となった江藤氏の記事・動画・ツイート

(1)

エコーニュースに掲載された記事「『一般社団法人Colaboの分析』(47) 仁藤夢乃氏コラボ代表者の講演料36000円を個人口座へ入金が情報公開請求で判明 『非営利型』一般社団法人の要件が崩れ、大量脱税の疑い」の内容(2020年12月29日)

※翌日に、記事内の一部を削除

(1-2)

この記事を告知するツイッター投稿(同日)

(2)

江藤氏が運営するYouTube「えこーにゅーす・チャンネル」に投稿された動画「Colabo特集(8)仁藤夢乃氏ら脱税疑い・・・被害女子の祝い名目で10000円の高級和牛コースを堪能 講演料の個人口座への入金と合わせて『非営利型』一般社団法人の要件が崩れる可能性」の内容(2020年12月31日)

(2−2)

この動画を告知するツイッター投稿(同日)

(3)

エコーニュースに掲載された記事「『一般社団法人Colaboの分析』(46)仁藤夢乃氏 アパート経営業とモラルハザード構造・・・想定リターン3億4千万と障害者自立へのアンビバレンツ」の内容(2020年12月15日)

(3-3)

この記事を告知するツイッター投稿2回(同日)

(4)

「えこーにゅーす・チャンネル」に投稿された動画「仁藤夢乃・Colaboの分析(2)、アパート経営と生活保護受給支援の事業モデル・・・推定リターン3億4000万、フェミニスト界の不動産王」の内容(2020年12月16日)

(4−4)

この動画を告知するツイッター投稿(同日)

(5)

フランクフルトを食べている仁藤さんの写真を掲載した上で「AV新法に反対の仁藤夢乃氏が、食品で擬似口腔性交した自撮り画像を、ご本人の裏垢から探して掲載したニュースサイトもこちらです」とツイート(2020年11月18日)。

(6)

同じ写真を掲載した上で「ごめん。量が多いしあと相手の利益になる情報は出せない。こっちのタイミングで出すよ ゆめにゃんの擬似フェラ画像とかはね」とツイート(2023年1月1日)

(7)

同じ写真を掲載した上で「『Colaboと仁藤夢乃さんを支える会』さんと堀弁護士@Colabomamorukai @ShinHori1 仁藤氏が今年までずっと擬似フェラ自撮り画像をアップしてたのは反論ないですね?」とツイート(同日)

(8)

同じ写真を掲載した上で「あとColaboさ、私相手の訴訟で、ゆめニャンのお下劣写真は対象にしてないわよね? これ、どうして? 報道として正当だって自分たちで白旗あげるの?」とツイート(2023年3月7日)

※(6)〜(8)のツイートは提訴後に投稿されている。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

トナカイさんへ伝える話

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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