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トナカイさんへ伝える話(174)7月前半の取材

小川たまかライター
那覇市内で撮影

 7月に入ってからの取材の状況を簡単にまとめます。

(目次)

7月8日

・エコーニュースvsColabo裁判の本人尋問@東京地裁

7月9日

・伊藤詩織さん、最終報告会 @東京

7月11日

・沖縄県庁前、フラワーデモ

7月12日

・米兵初公判(那覇地裁)、ヤギ雑炊を食べる

7月13日

・現地取材など

7月8日

エコーニュースvsColabo裁判の本人尋問@東京地裁

 どういう裁判なのかさくっとおさらいしますと、Colaboの記者会見で弁護団から「デマ捏造者」「古参のストーカー」という発言があり、エコーニュース代表の江藤貴紀氏が「これは俺のことかー!」とColaboを訴えた裁判です。

 Colabo側にはいつもの神原元弁護士や太田啓子弁護士以外にも100人以上の弁護士が名を連ねており、これはColaboの他の裁判(対暇空茜訴訟や、Colaboがエコーニュースを訴えている裁判)でもない異例の対応です。

 理由は、江藤氏がColaboや発言者の弁護士だけではなく、そこに座っていただけのColabo理事や弁護団の他のメンバーまで訴えたからです。さすがにそれはないだろう、司法の濫用だろう、ということで有志の弁護士が集まっています。

 今回の本人尋問は、江藤氏、仁藤夢乃氏、神原弁護士の3人に対してそれぞれ行われました。Colabo弁護団の主張は、「デマ捏造者は暇空茜を指して言ったこと。ただし江藤氏についてだとしても客観的事実である。古参ストーカーについては、客観的事実に基づいた主張である」みたいな感じです。

 前半が江藤氏に対する主尋問と反対尋問だったのですが、これがもう稀に見るすごさでした。詳細は別記事にまとめるかもしれないので、ハイライト部分だけ書き抜きます。

 補足すると、神原弁護士が「古参ストーカー」について、客観的事実を示そうとしている部分です。

仁藤さんの写真を863点保存

水着写真や、「擬似フェラ」に見立てる投稿も

神原弁護士:あなたは仁藤さんの2011年当時の写真を探し出し、プライベートの863点の写真を見つけていますね。

(※)仁藤さんは2011年当時21歳前後。友人と共有するためにネット上にアップしていた写真を江藤氏が何らかの方法で見つけ出していた。

江藤氏:863点はそうです。ただプライベートではなく、宣伝的な写真もある。

神原弁護士:これはあなたにとって必要だった?

江藤氏:重要です。仁藤さんは性的な表現について極めて厳しく、フェミニスト的な発言を2014年〜2015年頃から始めました。しかしそのわずか3年前の2011年には水着の写真を自分で公開していました。(その行為が矛盾であるという内容の説明を続けようとする)

神原弁護士:わかりました、わかりました。あなたは乙46号証について「擬似口腔性交」「擬似フェラ自撮り」と。そういう趣旨でネットで晒しましたか?

江藤氏:晒したという表現はどうかと思うが、そういう趣旨の投稿はしました。

神原弁護士:(仁藤さんの水着の画像を希望するフォロワーに対して、江藤氏が「追加したわ!」と返答しているやり取りを挙げて)こういうのは公的な批判と関係ありますか?

江藤氏:彼女がしているラディフェミ的な主張と矛盾するので……。

 以上。

 江藤氏が仁藤さんの若い頃の写真を発掘したり、その中にあった水着の写真やフランクフルトを持っているアップしたりしていることは、この件を追っている人の間では知られていました(で、江藤氏の弁護団は、フランクフルトが男性器に見立てられることがある事実をポルノ動画・画像を使って書面で主張していました)。

 江藤氏は本人尋問でこの点を指摘されてどう答えるのかなと思っていたところ、「仁藤さんは性的表現を規制したがっている人なのに、自分は水着や擬似フェラ画像を自らアップしていた。矛盾している!」という主張でした。その矛盾を指摘するために画像を保管したり拡散していたりしたのだから、ストーカー行為ではなく、仁藤さんに対する取材と情報発信に過ぎないという主張のようです。

 キッツいな……。もう何もかもキツい。まず、女性が水着写真の自撮りをアップすることと、広告で女性の身体が性的脚色をされて提示されることの区別がついていないのが。フェミニストは「女性の身体は性的だ」と言っているのではなくて、「性的な意味付けだけを意図して女性の身体を使うのをやめろ」と言っているのであり……。

 さらに、フランクフルトの「擬似フェラ」については、仁藤さんはそういうつもりでアップしていないと言っているし、もしも江藤氏の推測通り、彼女が性的なネタのつもりで写真を撮ってアップしていたとしても、広告表現の中で女性身体が性的に描かれて提示されるのとは全然別の話だから……。

 しかしこういう点まで裁判官(3人とも男性裁判官)が理解しようとするのかは期待が薄いため、Colabo弁護団は「こういうのは取材目的とは言えないでしょ? フォロワーとのやり取りから見てもあなたの私的興味でしょ?」という主張に絞るのではないかと予想します。

江藤氏の主張「仁藤さんは下ネタが多い」

 途中で休憩が一度入ったのですが、その直前に傍聴席がざわめいた一幕がありました。傍聴席は30人近く座っていて、Colabo支援者が多かった印象ですが、裁判ウォッチャーや江藤氏のファンっぽい男性もいました。

神原弁護士:ちょっと一点だけ補足。仁藤さんのアップした写真について、『たまげ大福だっちゃ』と言うキャプションがついてます。これは被災地支援の商品名であること、あなたはご存知だったんでしょ?

江藤氏:仁藤さんは下ネタが多いので……。「たまげ」というのは、キンタマの毛という意味で言っている。

(ざわつく傍聴席、江藤氏をガン見する裁判官3人)

 「たまげ大福だっちゃ」というのは、仙台弁の「たまげた」「だっちゃ」と「大福」をかけたネーミングで、仁藤さんと被災地の若者が一緒に作った商品です。それを下ネタだというのは……(唖然)。

 裁判官はここではまったく笑っていませんでしたが、途中で江藤氏が神原弁護士の質問に対して何度か「質問は個別具体的にお願いします!」と言い返した場面で何度か右陪席と裁判長が笑ってました。

 私は江藤氏に呆れている笑いかと感じましたが、見ようによっては相手方弁護士に果敢に言い返す原告を面白く思っている可能性もあり、こればっかりはわかりません。

東京地裁前
東京地裁前

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ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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