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コロナ禍で譲渡会が中止に… 犬の散歩仲間が繋いでくれた初ニャンコとの暮らしとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

コロナ禍の中、人が集まる譲渡会は、どこも中止せざるを得ない状況です。では、「保護猫を飼いたい」と思っている人はどうすればいいのでしょうか。いまは、子猫が生まれているシーズンなので保護猫は多くいます。それなのに、子猫たちは、なかなか思うように里親の元に行くことができませんね。そんなとき、とある希望者の女性のもとに 犬の散歩仲間から、連絡が入りました。今日は、猫を初めて飼うこととは? について、解説します。

猫を飼うなら、保護猫を

撮影筆者 避妊手術直後
撮影筆者 避妊手術直後

↑避妊手術を終えたところ(青いバンドは静脈点滴を外した跡)

北見さん(仮名)は、去年の冬に、犬を亡くしました。ずっと犬を飼っていましたが、ニュースなどを見て今度は「保護猫を飼いたい」と考えていました。しかし、この時期、猫の保護団体の譲渡会は、軒並み中止になりました。北見さんは、猫を飼うのは初めてなので、譲渡会に行って、いろいろと教えてもらおうと思っていましたが、いまの時期、難しくなりました。

犬と一緒にいた頃は、散歩をしていたので、その縁で、買い物に行くと犬仲間によく「保護猫を飼いたい」と話していました。すると、それを人づてに聞いた人が、子猫を連れてきてくれました。北見さんは、初めて猫を飼うので、人懐っこい女の子を選んでくれたそうです。ふんわりとした小さい命を「大切に育てたい」と北見さんはすぐに動物病院へ。

子猫を譲渡されたときのチェック項目

北見さんは、犬の治療で何回も通ってきていたので、子猫をもらってすぐに、私たちの動物病院に子猫を連れて来らました。「先生、つい先ほど、もらいました。診てもらえますか?」と。子猫の病気や飼い方を教えてほしいといわれました。以下がチェック項目です。

・猫エイズと猫白血病を持っているか?

ほどんどの病院で猫エイズと猫白血病の検査キットがあります。十分程度待つと結果が出ます。多頭飼いの人は、他の猫に感染するので、調べましょう。1匹飼いの場合でも猫が猫エイズや猫白血病を持っていると、病気が治りにくかったりするので、調べておくといいですね(猫白血病ウイルスを持っていると、リンパ腫にもなりやすいので)。

・ノミ、ダニ、疥癬、回虫、条虫などの寄生虫疾患になっていないか?

野良猫は、寄生虫を持っている子が割りにいるので、検査して駆虫してもらいましょう。動物病院に行けば、駆虫薬がありますので、家に入れる前に検査することが大切ですね。これからの寄生虫は、飼い主にも感染しますので。

・生後何月か?

生年月日がいつなのか、保護猫ではわかりにくいので、動物病院でチェックしてもらうといいですね。

一般的には、歯で見ます。

・生後1カ月未満は、歯が生えていないので、この時期はミルクで育てます。

・生後2カ月ぐらいから、乳歯が生えます。この時期から離乳食になります。

・生後4カ月ぐらいから、前歯が乳歯から永久歯になります。

・生後6カ月ぐらいから、犬歯(一番尖っている歯)のまだ乳歯が抜けていないのに、永久歯が顔を覗かせます(乳歯と永久歯が同時に生えています。他の歯は、乳歯が抜けてから永久歯が生えます)。

上記のようにして、生後何カ月かを見ます。

・目ヤニ、鼻水のチェックで猫風邪は大丈夫か?

子猫の時期は、母猫からの母体免疫が切れる時期なので、猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症など)にかかりやすいので、目ヤニや鼻水を診てもらいましょうね。

北見さんの猫は、生後2カ月ぐらいで健康な子猫でした。

・生後4カ月過ぎで避妊手術

北見さんにとって初めての猫なので、犬とはやはり違います(犬は、発情がわかりやすいし、生後6カ月以降に発情の子が多い)。

彼女は、ワクチン接種のときに、わからないことを箇条書きにされて質問されます。子猫は、女の子だったので、避妊手術をすることは理解していました。この子は飼い主が気づかないうちに家出をして妊娠しても困るので、体重測定のため2週間に1度ぐらいのペースで連れて来ました(発情が来る前に、避妊手術をすると、乳がんのリスクもかなり少なくなります)。

そのときは、北見さんが飼われてから、2カ月、つまり生後4カ月です。いまや猫は、こんなに早い時期から、発情が来る子もいます。20年以上より前だと、生後1年で避妊手術が一般的だったので、こんなに違っています。

まとめ

撮影筆者 避妊手術後の消毒で来院
撮影筆者 避妊手術後の消毒で来院

コロナ禍の中で、犬も猫も、譲渡会などの開催が少なくなっています。

北見さんは、飼っていた犬の縁で新しい保護猫を探すことができました。「前の子が、運んでくれたのかな、と思っています。この子も前の子と同じように、大切に飼いたいです。20歳まで生きてほしい」といわれて、避妊手術が無事に終わった子を連れて帰りました。猫を飼うときは、避妊・去勢手術が一般的な社会になりますように。多頭飼育になると、人も猫も幸せになれないことが多いですね。ひとりの人が世話できる猫の数は、そう多くないです。こうやって保護猫が里親の元に行き、だんだんと野良猫がいない日本になりますように。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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