異次元緩和前と現在の日本国債の保有者の比較、やはり国債の買い余力があるのは民間預金取扱機関(銀行)か
財務省は日銀が国債の買い入れ減額を表明したことを受け、国債の発行年限の短期化を進める。日銀に代わる買い手として、まずは異次元緩和の前に発行残高の4割ほどを保有した銀行に照準を定める(19日付日本経済新聞)。
異次元緩和、つまり2013年4月に日銀が量的・質的緩和策を決める以前の国債の保有者はどうなっていたであろうか。
2013年1~3月期の資金循環統計(速報値)の数値が手元にあるので、これを参考にしたい。
2013月末の国債(国債・財融債のみ)の残高は807兆1421億円
民間預金取扱機関(銀行)、314兆9018億円、39.0%
民間の保険・年金、222兆3979億円、27.6%
日本銀行、93兆8750億円、11.6%
公的年金、62兆9924億円、7.8%
海外、35兆2469億円、4.4%
投信など金融仲介機関 32兆1704億円、4.0%
家計、24兆2126億円、3.0%
財政融資資金 9034億円、0.1%
その他 20兆4417億円、2.5%
直近の資金循環統計(速報値)の数値は27日に3月末分が発表されるが、2013年12月分が出ているのでこちらで比較したい。
2023年12月末時点の国債(国債・財融債のみ)の残高は1080兆8574億円
日本銀行、581兆3070億円、53.8%
保険・年金基金、230兆8873億円、21.4%
預金取扱機関(銀行)、92兆6837億円、8.6%
海外、72兆1677億円、6.7%
公的年金、53兆9883億円、5.0%
家計、13兆4874億円、1.2%
その他、36兆3360億円、3.4%
日銀が保有する国債をどの程度まで落とすのかは現時点では不明ながら、この数値からみても、預金取扱機関に余力があることには間違いない。ただし、国債残高の増加分までをカバーできるのか。IRRBB規制などもあり、すべてをカバー仕切れるとは考えづらい。
落とし所としては、日銀は国債の保有残高を時間をかけながら現在の半分程度に落とす。預金取扱機関(銀行)が200兆円程度カバーする。民間の保険・年金や公的年金は保有額の大幅増は見込みにくい。海外はすでに当時の倍程度の保有額となっている。家計(個人)にはまだ余力はありそうだが、この数値からは10兆円規模となる。残りをどうするか。
記事によると21日に開く国の債務管理に関する研究会では、「発行年限の短期化や変動利付国債の発行など、市中に供給する金利リスク量の縮減を図る対応も必要となる」と提言するようである。