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食糧難の北朝鮮、住民総出で「蛭(ヒル)」取りに没頭

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

深刻な食糧難に苦しんでいる北朝鮮の人々は、生き残るために必死だ。

韓国にほど近い黄海南道(ファンヘナムド)海州(ヘジュ)の沿岸には、非常に広い干潟が広がっている。そこで取れるあるものに、全市民が群がっている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

そのあるものとは「蛭(ヒル)」だ。北部の両江道(リャンガンド)の密輸業者は、黄海南道のみならず北朝鮮各地でヒルを買い取り、中国に輸出している。買取価格は小さいものは1キロ380元(約8920円)、大きいものは550元(約1万2000円)、乾燥させたものは100グラムで38元(約830円)から55元(約1200円)だ。

輸出する際には、かさ増し用のミミズを入れる。こちらは1キロ10元(約218円)から20元(約436円)で買い取ってもらえる。ヒルでもミミズでも捕まえれば捕まえるほど懐が潤うため、海州市民は目の色を変えてヒル、ミミズ取りを行っている。子どもたちも学校を休んでまで作業に当たっている。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

ヒルといえば、人間の皮膚に食らいつき血を吸うことで非常に気持ち悪く嫌われる生物だが、食うや食わずの暮らしを送っている海州の人々はあまり気にしていないようだ。

「ヒルを捕まえようとして血を吸われて皮膚が赤黒く腫れ上がったりもするが、一匹でも多く掴まえたらカネになると思い、痛いのも忘れてヒル取りに夢中になっている」(情報筋)

しかし、最近は質が問われるようになり、ヒルならば何でも買い取ってくれるわけではないようだ。

「以前ならヒル20キロあたりミミズ1キロを混ぜても何の問題もなく中国に輸出できて儲かったが、中国の検品が厳しくなってミミズが少しでも混ざっていたら(中国側の業者が)買い取ろうとしないので損をする。今では(1キロの価格が)40元(約873円)から50元(約1090円)まで下がっている」(情報筋)

高値で買い取ってもらえるのはピチピチで発色のいいものだけだ。

ちなみに漢方でヒルは水蛭(すいてつ)と呼ばれ、血液をサラサラにする効果があるが、日本では医薬品として認められていない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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