浮き輪があっても水難事故に注意 水遊びで浮き輪が流されるってどんな時?
最近では80キロ、36時間にわたり海上にて漂流した女性が浮き輪で命をつなぎました。とは言っても、浮き輪の注意書きを読むと「背の立つところで使う」「風の強い時は使用しない」と書いてあって、これらを守っていればそもそも流されません。
これまで発生した事故をまとめて解析すると、命を守るためさらに次のようなことにも気をつけなければならないことがわかります。
1.流れのある河川では使わない
2.流された浮き輪を取りに行かない
浮き輪で流される人の検証動画
海にはいろいろな流れがあります。だから浮き輪で流される人は確かにいるのです。では浮き輪で流されるとはどういうことか、簡単な検証を行ってみました。動画ニュースにまとめてみましたので、ご覧ください。
水難事故 浮き輪あっても注意 日テレニュース ドローン空中動画付き
この検証では、関東地方のある海岸を選びました。この海岸では夏になると地形的に陸から海に風が吹くことが多くなります。
浮き輪に身体を通して流される場合、多くは風で流されています。検証動画でも風に沿って流されている様子が映っています。この時の風速は秒速4メートル前後で、穏やかな風です。少し強めに風が吹いて例えば秒速10メートルにでもなれば、あっという間に遠くに流されてしまいます。
検証動画では、身体のほとんどが海につかる浮き輪と身体のほとんどが海面上に出るフロートとを比較しています。風で流される場合には、身体を通した浮き輪の方が流されにくいことがわかります。水面に出た浮き輪と頭が、風を受けて帆の役割を担いますが、水中に没している身体が水の抵抗を受けて減速しているからです。でもこれが風ではなくて離岸流などの海浜流に流されているのなら、浮き輪もフロートも同じ程度の速さで流されますからやっかいです。
注意書きにあるように、浮き輪は背の立つ水辺で使って遊ぶものです。もし海水浴中に深みに迷い込み流されたら、浮き輪に身体を通したまま浮力を安定させることをまず考えます。風で流されているか、海流に流されているかなど、筆者も含めて流されている一個人には知るすべもない話なので、こういう絶体絶命の場面では、身体の抵抗により減速されるかもしれない方に生還を賭けることになります。
浮き輪で流されて助かった人
これまで浮き輪で流されて、生還を果たした人はいるのでしょうか。過去の事故の事例を下に示す一覧にまとめてみましたので、ご覧ください。検索には新聞・雑誌記事横断検索を使って、1980年から今日までの記事について「浮き輪+流され+救助」の検索式にかかった記事をピックアップしました。記述は日付・場所・年齢人数・流された距離の順です。
2024.07.08 新潟県柏崎市 海 成人 90メートル
2023.08.28 千葉県御宿町 海 17歳ら4人 200メートル
2020.08.02 北海道 海 2歳 2キロ
2015.07.20 神戸市垂水区 海 中学生2人 10メートル
2010.08.16 石川県羽咋市 海 4人
2010.07.22 沖縄本島西海岸沖 海 30歳 12キロ
2008.07.21 熊本県天草市 海 7歳を含む5人 5キロ
2007.08.20 千葉県館山市 海 高校生2人 2キロ
2006.07.13 神奈川県平塚市 海 高校生3人 海岸付近
1998.08.14 島根県大社町 海 9歳 100メートル
ニュースとなった水難事故のうち、漂流距離の最長は2010年に沖縄で流された方の12キロでした。30歳の男性でしたが検索にかかった記事中で「付近を航行する船舶に手を振っても気付いてくれなかった」「深夜になって観覧車のライトが消えたので不安だった」と漂流中の気持ちを吐露していました。
多くの事故で、複数の人が浮き輪につかまって流されていたことがわかります。2008年に熊本県で発生した水難事故では、7歳を含む5人が5キロにわたって漂流し、その後捜索に出た漁船に救助されています。5人で浮き輪の浮力を分け合ったと想像すると、とても厳しい状況だったと考えられます。
浮き輪が原因となって溺れて命を落とした人
次に、浮き輪が原因となって溺れて命を落とした人がどのような経緯をたどったのか見ていきましょう。下に同様に検索した結果を一覧にして示します。1980年からこれまでの記事について「浮き輪+流され+死」を検索式として検索にかかった記事をピックアップしました。日付・場所・年齢・経緯と流された距離の順です。
2023.08.11 京都府木津川市 川 3歳 浮き輪外れ10キロ
2023.07.05 鹿児島県龍郷町 海 39歳 浮き輪付け流された4歳の娘の救助中
2022.07.24 鳥取県米子市 海 67歳 流された息子を浮き輪をもって救助に向かう途中
2021.09.19 滋賀県大津市 川 7歳 浮き輪外れ400メートル
2019.08.10 香川県三豊市 海 35歳 浮き輪付け流された7歳のおいの救助中
2017.07.29 愛媛県今治市 海 45歳 流された浮き輪を取りに行った
2012.08.26 高知県四万十市 川 51歳 流された浮き輪を取りに行った
2011.08.15 浜松市北区 川 42歳 流された浮き輪を取りに行った
2010.08.28 愛媛県新居浜市 海 48歳 流された浮き輪を取りに行った
2005.07.18 北海道厚田村 海 34歳 浮き輪付け流された11歳の救助中
2001.08.25 東京都青梅市 川 33歳 大型浮き輪で転落
1997.08.03 山形県温海町 海 34歳 流された浮き輪を取りに行った
1996.08.05 愛知県安城市 海 59歳 流された浮き輪を取りに行った
1993.08.22 愛知県美浜町 海 小1・5歳 浮き輪で流され転落
最も恐ろしい事故は、子どもに浮き輪をつけて川や海に入り流されて、結局浮き輪が外れて溺れた事故ではないでしょうか。このような事故は絶対に繰り返したくないと誰もが思うことでしょう。予防するなら川には浮き輪をつけて入らないことにつきます。川では何があっても流されないように膝下までの水深で遊ぶようにしましょう。
30歳から60歳までの比較的身体が動くような人の死亡事故の多くが、流された浮き輪を追いかけた時に発生しています。浮き輪に子どもがのっていればどうしても追いかけたくなりますが、流石に空の浮き輪を追いかけて溺れてしまったらやるせないし、この事故は十分に防ぐことができます。風の強い日には浮き輪の空気を抜いておけばいいのです。
まとめ
この半世紀の間に浮き輪は技術革新によって、より安全な遊具になってきています。浮き輪は背の立つ場所で使い、風の強い日はたたんでしまっておきましょう。