進むバリアフリー浸透、手すり実装住宅は4割超え
「まずは手すり」か、バリアフリー主要項目整備率
高齢者人口の増加、さらにはその中でも足腰が弱った人の数が増え、平均世帯人数が減少、そして既存住宅の建て替えやリフォーム機運の高まりなど、多様な条件の重なりから、高齢者などに配慮した住宅設備「バリアフリー」への注目が集まっている。総務省統計局が2014年7月に発表した、2013年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果を確認すると、何らかの形で「バリアフリー」を備えた住宅は2654万5000戸となり、居住者のいる住宅に占める割合は50.9%に達していることが明らかになった。5年前の2008年時点における同様調査の結果48.7%と比べると2.2%ポイントの増加となる。
主要項目別に確認すると、手すりの普及率は比較的高く、これが全体のバリアフリー回答を押し上げている。一方で浴室への配慮は5分の1程度で前回調査からはわずかに減少、段差のない屋内も同程度の2割で上昇程度は1.4%ポイント止まり。「車いす」に関する配慮の浸透割合は16.2%でわずか0.1%ポイントのみの上昇。
高齢化に伴う肉体の衰えによって、自分の想定していた動きよりも鈍い反応しか身体が動かず、思わぬトラブルを引き起こすことは多い。ほんのわずかな段差でも、乗り越えられると信じ込み、普段の歩きのようにその場を通り過ぎた際に、つまづいてしまうこともある。そして転倒などによる骨折リスクは、高齢者の方が高い。
「車いす」への配慮は利用している高齢者などそのものが少ない結果とも考えられる。しかし浴室や段差への配慮は、高齢者などが要れば大よそ必要な設備となる。もう少し高い整備率への上昇を望みたいところではある。
住宅様式で大きく変わる整備率
一方、バリアフリーの整備率を住宅の建て方別でみると、大きな差異が生じることになる。
一戸建てにおいては「バリアフリー」はセールスポイントの一つ。結果として全体と比べても普及率が高め。また既存の一戸建て住宅の保有者も、自分の家だからこそリフォームなどで対応する事例が多く、また将来も現在の住宅に住み続けることから、前もって整備をしておくことも多々ありうる。
長屋建てや共同住宅などの賃貸系住宅では、導入が立ち遅れている。エレベーターがある、比較的高層(≒建設年数が新しい、参考:「時代は一戸建てから共同住宅へ・さらに高層化も進む」)の共同住宅では普及率がやや高いのが幸い。これは高層共同住宅=新設住宅が多い=高齢者への配慮が成されているといった、連動性によるところ。
気になるのは「高齢者対応型共同住宅」なる共同住宅で、実際に設備が備わっているのは3/4に過ぎないこと。例えば浴室への配慮が4割など、「名前に偽りあり」と指摘されても仕方のない共同住宅が多数存在している。「高齢者対応型共同住宅」の明確な定義は無く、あくまで住宅側でそのセールス文句を使っているのみで、実際には高齢者などのための設備は無いとの住宅が23.9%にも達している(100%-75.0%-「設備不詳」1.1%)のは、「看板に偽りあり」と評されても仕方がない。3/4の当たりくじで住宅を選択するのは、少々リスクが高い感はある。
そのような必要性に迫られた場合、「高齢者対応型共同住宅」的な表記だけで飛び付くことなく、必要十分な設備が備わっていることを確認した上で、選択肢に加えるようにしたいものだ。
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