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ドッペルゲンガー現象。「自分と同じ顔の人が他に2人いる」といわれるが、出会う確率はどれくらい?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。

マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。

さて、今回の研究レポートは……。

この世には、自分にそっくりな人が、自分を含めて3人存在しており、そのうち2人が出会うとたちどころに死んでしまう……という説がある。

その名も、ドッペルゲンガー現象。

筆者は、そんなもの都市伝説だろうと思い、ぜんぜん気にしていなかった。

だがあるとき、オソロシイ体験をしたのである。

それは、ある駅で電車を待っていたときのこと。

母方の叔母にそっくりな女性が、ホームを歩いてきた。

その叔母は故郷の種子島にいるはずで、東京をウロウロしているはずはない。

世の中には似た人がいるものだなあと思いながら、つい彼女の顔をまじまじと見たら、目が合った。

すると! 彼女は「ヒロユキさん!」と叫んで、駆け寄ってきたではないか。

呆然とする筆者に、その女性は「あなた、連絡もしないでどこにいたの!?」と詰め寄る。

しかし筆者は本名が理科雄で、「ヒロユキさん」という名前など、名乗ったことはない。

「自分はヒロユキさんではない」と懸命に訴えるのだが、そのヒロユキさんという人はどうやら失踪中のようで、筆者が「人違いです」と言えば言うほど、叔母(にそっくりな女性)の疑惑は確信を深めていく……。

長い押し問答の果てに、彼女は納得してくれたようだった。

いや、こちらを何度も振り返り、首をかしげながら去っていったから、まったく納得しなかったのかもしれない。

筆者は、ホームに来た電車に飛び乗ったが、気づけば汗びっしょりだった。

筆者は叔母と瓜二つの女性に会った。

その女性も、知人のヒロユキさんによく似た男性(筆者)に会った。

そこで思い出したのが、ドッペルゲンガー現象である。

友人から聞いたときには笑い飛ばしたが、世の中に「自分ときわめて似た人物」がいるのは、あり得ないことではないかもしれない……。

◆予想外に確率が高い!

この体験で、筆者はドッペルゲンガー現象を全面的には否定できなくなってしまった。

いや、もちろん、否定したいのである。

だが、筆者が「実際に、自分とそっくり同じ人間を見た人がいたら、ネットで話題沸騰しているのでは?」と言ったとしても、「それを経験した人はすべて死ぬのだから、目撃情報がないのは当然だ」と反論されるだろう。

それに対しては、どう答えればいいのか……。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

そこで、ここでは開き直って「自分とまったく同じ顔の人間が、この世にあと2人いる」と仮定しよう。

その場合、自分が彼らに出会う確率はどの程度なのだろうか?

アフリカやヨーロッパなどに、筆者とまったく同じ顔をした人がいる確率はグンと低そうなので、ここでは日本の人口1億2600万人のなかで考えよう。

そして、明日1日に筆者が出会う人の数を、チラッと顔を見る程度の通行人を含めて200人だとしよう。

そのなかに「自分と同じ顔の2人」が含まれる確率を計算すると、「32万分の1」である。

う~む、憂慮すべき数値なのかどうか、よくわからん。

ならば、1年間で考えてみよう。

365日以内に、彼らに会ってしまう確率を計算すると……えっ、864分の1?

こ……、これはちょっと大きすぎるんじゃないか?

自分という1人の人間が死ぬ確率が864分の1ということは、逆にいうなら「日本人の864人に1人が、1年以内にドッペルゲンガー現象で死亡する」ということだ。

日本の人口1億2600万人のうち、年間死者数は14万6千人……!

大変な数である。

2021年に交通事故で亡くなった人は2636人だが、それをはるかに上回る。

ドッペルゲンガー現象による死者を統計に入れるとしたら、日本人の死亡原因は、こうなってしまう。

1位 悪性新生物(がん)…年間38万1千人

2位 心疾患…………………年間21万5千人

3位 ドッペルゲンガー……年間14万6千人

いくらなんでも死にすぎだ!

こんなにたくさんの人がお亡くなりになったら、ドッペルゲンガー現象は国会で問題となり、テレビのニュースは「外出の際は、ドッペルゲンガー現象にお気をつけください」と注意を喚起するだろう。

野球観戦やコンサートやコミケなど、怖くて行けたものではない。

もちろん、出会いと死の因果関係がハッキリしない以上、恐れる必要はないはずだ。

前述のコワイ体験があるため、筆者は必要以上に恐れてしまっているのだろう。

だが、しかし……。

皆さまのなかに「自分にそっくりな人と2回以上会ったけど、ぜんぜん平気でした」という方がいらっしゃったら、どうか教えてくださいませ~。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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