Yahoo!ニュース

新入社員のみなさんへ:不安と緊張を乗り越え有能な社員になる方法

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:新入社員たちがこれからの会社と社会を作ります(写真:アフロ)

■新社会人、おめでとう

新社会人のみなさんへ。おめでとう! 4月からの新しい生活がスタートです。あなたの活躍を期待しています。

やる気と自信にあふれているあなた。その調子で、頑張りましょう。

でも、そうでないあなた。大丈夫です。多分、不安を感じていない新入社員など、誰もいないと思います。あなたの隣にいた、元気はつらつの強そうな同期入社の人も、きっと不安をかかえていたことでしょう。

■不安と緊張は良いことです

不安もストレスも、悪いことではありません。初めての場所に来た時、何が起こるかわからないのですから、耳をすまし、様子をうかがい、慎重に歩みださなければなりません。この心身の状態が、不安とか緊張とか、ストレス反応と呼ばれるものです。

何が起こるかわからない場所で、ボーとしていたら、危険です。緊張感は必要です。

心理学の研究によれば、ストレスはパフォーマンスを高めます。試験だって、試合だって、だらけていて好成績は残せません。気合が入った状態だからこそ、実力が発揮できます。あなたは、今そういう状態なのです。

さらに、ストレスは思いやりの心を呼び起こします。周囲の人と協力したり、親切にしたくなったりするのです。だから多くの職場で、同期入社組の友情が芽生えます。あなたは、今そういう状態なのです。

新入社員として、緊張したり、汗を飽きたりしているでしょう。でもそれは、正常なストレス反応です。問題は、このストレス反応をどう解釈するかです。

自分は緊張しやすいダメな人間だなどと思うと、ますます疲れます。そうではなくて、今あなたは新しい環境にチャレンジしているのだと考えましょう。

あなたは、これまでも新しい学校、新しいクラスに、そうやって適応してきました。就職活動も乗り越えてきました。だから、今回の社会人デビューも、きっと大丈夫です。

■職場で上手くやっていくために:先輩上司との上手な付き合い方

先輩や上司、おじさんおあさんから見れば、まだまだ若いみなさんです。何かができない、何かを知らないといったことは、大した問題ではありません。

上司や先輩の中には、ちょっと近づきにくい人もいるかもしれません。怖いと感じる人もいるかもしれません。しかし、怖いと感じて叱られないように消極的になってしまうと、かえって上司や先輩をイラつかせます。

この人たちは、ほとんどの場合、悪人ではなく仕事熱心な人たちです(ちょっと表現は不器用かもしれないけれど)。後輩や部下を育てたい思いも持っています。それなのに、消極的な態度を取られると、心がざわつくのです。

叱られるのを覚悟のうえで積極的に行動すると、意外とかわいがってくれたりするものです。

■貢献する思いを持とう

あなたは、会社の中の役立たず、社会の中の無用者になりたいでしょうか。そんな人は、いませんね。何とか貢献し、活躍したいと、少なくとも心の底では思っていいるはずです。その思いを行動に表しましょう。

最近のドラマを見ていると、「変わり者」の主人公がよく出てきます。発達障害などの診断名が付きそうな主人公たちです。

でも、この主人公たちは嫌われ者にはなっていません。そのポイントは、主人公たちがお客様のため、会社のために、一生懸命働こうとしていることだと思います。

高校のクラスだって、クラスのために一生懸命な生徒を、みんなは嫌わないでしょう。

■仕事への取り組み方

研究によれば、伸びる中小企業には、次のような特徴があります。

1情報共有

2若者にも仕事を任せる

3社長が夢を語る

大企業の場合は、なかなか社長の顔が見えにくいでしょうから、各部署のトップが夢を語ることになるでしょうか。

会社が伸びるとは、組織の問題だけでなく、働く社員一人ひとりが、より良く働けることです。

けれど、こんなことは社長に語るべきで、新入社員に言ってもしかたないでしょうか。そんなことはありません。会社環境は変えられなくても、あなたの心理環境は自分で変えられます。

1自分から情報を得よう

業界の状況、会社や部署の状況をよく理解しましょう。そうすると、仕事の意味を感じられます。そうなれば、同じ仕事をしても疲労度が違うのです。

2自律性とオーナーマインドを持とう

人の心を痛めつけるのは、「やらされ感」です。同じ仕事でも、自己決定して進んで取り組んでると感じられると、楽しさが生まれます。

オーナーマインドとは、自分が店長、主任、社長になった感覚です。閉店間際に飛び込んできた客は、バイトにとっては嫌な客かもしれませんが、オーナーにとってはありがたい客です。

イヤな客に頭を下げるのも、オーナー感覚を持てれば、苦しさは和らぎます。

3組織の向かう方向を知ろう

表現力のある管理職なら、わかりやすく話してくれるでしょうが、そうでなくても、企業としての目標があるはずです。決してきれいごとだけではない、目標があるはずです。その高い目標を見上げましょう。

■一人前になるために必要なこと

せっかく就職したのに、あっと言う間に辞めてしてしまう人の心理は、仕事が辛いからではなく、成長の可能性を感じられないからだと言われています。失意と絶望の中で辞めていくのです。

でも、人は成長できるものです。今はとても有能な先輩、上司も、新入社員時代はだめだめだったという話は、よく聞く話です。

多くの先輩、上司は、後輩や部下のことを考えています。何とか成長してもらいたいと願っています。それを信じることができると、まだよく意味のわからない面白くない仕事でも、一生懸命取り組むことができます。

そうすると、徐々に仕事がわかってきて、仕事への喜びが感じられるようになり、ついには会社をしょって立つような一人前の有能な社員になっていくのです。

(これは、内発的動機づけ理論に基づく外発的動機づけから内発的動機づけに至るプロセスに基づく解説です)

■入社できたのだから大丈夫です

あなたが入社できたということは、会社のみなさんはあなたと働きたかったということです。

学歴だけ、入社試験の点数だけで選んだのではなく、面接での見事な回答だけで選んだのでもなく、要するに、あなたと一緒に働きたいと思ったから合格させたのです。

百戦錬磨の面接官が、あなたのことを、まだ荒けずりかもしれないけれど、きっと成長して会社の戦力になるだろう、この人と一緒に働けたらきっと楽しいだろうと、そう判断したのです。

私はその面接官と組織の判断を信じます。どうぞ、素敵な社会人生活のスタートを。新入社員時代の失敗も、きっとあとになれば、笑い話になるでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

碓井真史の最近の記事