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飲食店で食べ残したら持ち帰り禁止?それともOK?国は食品ロスをどう考えているのか #専門家のまとめ

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
持ち帰り(写真:イメージマート)

食品ロスを減らすための啓発活動を続けてきて、いつも話題になるのが、飲食店で食べ残したものの持ち帰りだ。店の人に尋ねると「食中毒になるから」「衛生上の理由で一律禁止」「保健所がうるさいから」などと禁止される場合が多い。食中毒が発生すれば、店の名前が報道され、営業停止となり、経営に大きく影響するからだ。でも、本当のところ、食べ残しの持ち帰りに関して決まりはあるのか。また、国はどう考えているのだろうか。

ココがポイント

▼食べ残しの持ち帰り、国は禁止していない。2017年5月、4省庁連名で飲食店・消費者それぞれに留意すべき点を通知している

飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むに当たっての留意事項(消費者庁、農林水産省、環境省、厚生労働省)

▼全国で最も早く呼びかけたのは福井県。「おいしいふくい食べきり運動」と名づけ、外食時に残った場合の持ち帰りも呼びかけている

「おいしいふくい食べきり運動」とは?(福井県エネルギー環境部循環社会推進課)

▼長野県松本市は宴会時、最初の30分間と最後の10分間に食べ切る「30・10(さんまるいちまる)運動」を展開、全国に広がった

残さず食べよう!30・10(さんまる いちまる)運動(長野県松本市)

▼2024年7月26日、厚生労働省は食べ残し持ち帰りガイドライン検討会開催、食べ残しを衛生的に持ち帰るガイドラインを制定に

「食品ロス」削減へ 食べ残し持ち帰り ガイドライン作成を議論(NHK)

エキスパートの補足・見解

外食時で最も大切なことは、適量頼み、食べ切ることだ。環境配慮の原則「3R(スリーアール)」でも、最優先は「Reduce(リデュース)」で、減らす、ロスを出さないことが最も資源やコストの削減になる。

しかし、外食の注文時、思ったより量が多かった、食べているうちにお腹いっぱいになってしまった、などの理由で、どうしても残ってしまった場合、自己責任で持ち帰ることは海外では既に当たり前のようにおこなわれている。

生ものは控え、火を通したものに限定する、季節を限定するなどの規定を設け、持ち帰りを推奨することは、資源活用を促し、食品ロスを減らす観点から重要だ。ぜひ積極的に進めていってほしい。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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