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右サイドバックへのコンバート。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

プロ7年目のシーズンを迎えているガンバ大阪のFW星原健太が新境地を切り拓くべく、右サイドバックでの挑戦を続けている。

長谷川健太監督からポジション転向を告げられたのは今年のグアムキャンプでのこと。初日の練習前、同監督に呼ばれた星原は「右サイドバックにチャレンジして欲しい」と言葉を掛けられたそうだ。思えば、09年に当時の西野朗監督から同じく右サイドバックへの転向を告げられたのもグアムキャンプの地。結果的にその年はFWにケガ人が出たこともあって途中でFWに戻ったが、本人によれば今回も基本的には「ダメだったら戻すから」との条件付きでのコンバートだったようだ。

「グアムに来る前にサイドバックにケガ人が出たりしていたこともあり、何となく予感はしていたので監督に言われた時も特に驚きはなかったです。ダメだったら戻すからとハッキリ言われていましたしね(笑)。ただ、やる限りは前向きに捉えてチャレンジしようと思っているし、ポジションがどこであれ試合に出られることが自分としては第一優先だと思っていますから。監督にも基本的には自分のスピードとか攻撃力とか自分のストロングポイントを活かしてくれればいいと言われている分、攻撃を仕掛ける場所が変わったくらいだとポジティブに受け止めて、今は自分の良さを出すことを一番に意識してプレーしています」

グアムキャンプの地で話していた通り、以降も、ポジティブなチャレンジを続けてきた。その証拠に2月25日に行われたガイナーレ鳥取との練習試合でも、右サイドバックとしてフル出場を果たした星原は、果敢な攻撃参加で存在感をアピール。15分にはMF二川孝広のスルーパスに反応して右サイドを駆け上がると、絶妙なクロスでFW川西翔太のゴールを演出した。

これには長谷川監督も「見ての通り、彼らしい攻撃力を発揮したプレーが増えている。あとはクロスなど最後のところでの精度が上がっていけば更によくなるはずだが、いいチャレンジをしてくれていると思う」と合格点。本人も経験を重ねる中で徐々に手応えを得つつあるようだ。

「サイドバックですから、まずは守備という意識はあるけれど、その上で自分のストロングポイントでもある攻撃力を徐々に出せるようになってきた。動き方やボールをもらうタイミングなど、周りとの連携も良くなってきましたしね。守備の部分ではまだまだ課題はありますが、基本的には守備の決まりごとがはっきりしている分、さほどやりにくさは感じていないし、このまま自分が積み上げていければと思います。今は、いい状態でボールを持てた時にはまず、直接ゴールを狙いに行く、というくらいの意識でプレーしていますが、その攻撃力の部分をより発揮できるようになることが理想です。」

子供の頃からずっとFWとしてプレーしてきた。ガンバ大阪への加入はジュニアユースチームから。当時から50メートルを5秒代で駆け抜ける俊足を武器とドリブル、突破力を武器に点を獲りまくっていたと言う。それはユースチームに昇格してからも変わらず、高校2年生時には高円宮杯全日本ユース選手権(U-18)、日本クラブユース選手権(U-18)でのW得点王に。点取り屋として名を馳せ、07年にはMF倉田秋らとともに満を持してトップチームに昇格した。

だが、プロになってからの6年間はと言えば、厳しいポジション争いの中、全くと言っていいほど試合に絡めていない。プロ4年目の10年こそJリーグデビューを果たし、自らの誕生日にJリーグ初得点を刻んだものの、6年間での成績はJ1リーグ8試合出場1得点。うち、昨年8月に期限付き移籍を果たした水戸ホーリーホックでもJ2リーグ11試合に出場し1得点と、その能力を思えばこそ、覚醒しきれていない状況だと言えよう。とはいえ、この厳しいプロの世界において彼がそれでもキャリアを重ねていることには間違いなく理由があるはずだ。と同時に、二人の監督が彼の能力を見極めた上で右サイドバックへのコンバートを考えたことにも。

今季こそ、その理由を彼自身の力で証明するシーズンになることを期待している。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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