『虎に翼』の脚本家・吉田恵里香は作品にどんな思いを込めたのか? #専門家のまとめ
NHKの連続テレビ小説『虎に翼』が最終回を迎える。
日本初の女性弁護士・裁判所長である三淵嘉子氏をモデルとしたこのドラマは、『おしん』や『ちゅらさん』、『あまちゃん』など数々のヒット作を生み出してきた朝ドラの中でも特異な存在感を放っている。その理由は、作者・脚本家である吉田恵里香さんの強いメッセージが色濃く描かれているからだ。
吉田さんは多くのインタビューに応じており、そのなかで印象的なものをまとめた。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
『虎に翼』は、日本のポピュラー文化において画期的な作品として位置づけられるだろう。吉田恵里香さんは、これまで「透明化」されてきたマイノリティや声なき人々を積極的に描き、その存在を可視化することに成功したからだ。
しかしこの作品の真骨頂は、そのような強いメッセージ性を持ちながらも、エンタテインメントとしての魅力を十分に備えている点にある。“社会派”作品が往々にして陥りがちな「生真面目で面白みに欠ける」ことをしっかりと回避し、日本でもっともメジャーな枠であるNHKの朝ドラで、娯楽性とメッセージ性の絶妙なバランスを成立させた。
さらに特筆すべきは、個人の問題を超えて、法や歴史的事件を通じて日本社会全体の課題と結びつけた点だ。民法改正、原爆裁判、少年法改正論議、尊属殺への違憲判決──ドラマで描かれた題材は、単なる過去の出来事ではなく現代の日本社会が抱える問題ともリンクする。
社会性を柔軟に描きつつ幅広い視聴者層に訴求する作品として、『虎に翼』は地上波ドラマの新たな可能性を切り拓いたと言えるだろう。