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メラトニンとセリシンの皮膚への効果とは?創傷治癒と抗酸化作用で美肌とアンチエイジングを叶える

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【メラトニンとセリシンの皮膚への効果】

皆さんは、メラトニンやセリシンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?メラトニンは、私たちの体内で作られるホルモンの一種で、睡眠リズムの調整や抗酸化作用などの重要な働きをしています。一方、セリシンは蚕の繭から抽出されるタンパク質で、保湿効果や抗菌作用があることで知られています。

最近の研究で、このメラトニンとセリシンを組み合わせた創傷治癒パッチが開発され、皮膚の損傷を修復するのに非常に効果的であることがわかってきました。メラトニンは、紫外線によって引き起こされる皮膚の炎症やダメージを抑え、細胞の修復を促進します。セリシンも同様に、抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、皮膚のバリア機能を高めることで創傷治癒を助けるのです。

さらに、メラトニンとセリシンには、シワやたるみなどの老化サインを予防し、美肌効果をもたらす働きもあります。これらの成分を配合したスキンケア商品も増えてきており、アンチエイジングを目指す人にとって注目の的となっています。

【創傷治癒パッチによる皮膚がん治療の可能性】

メラトニンとセリシンを利用した創傷治癒パッチは、皮膚がんの一種であるメラノーマの治療にも応用できる可能性があります。メラノーマは、皮膚のメラニン色素を作る細胞ができてしまうがんで、早期発見・治療が大切です。

手術でメラノーマを取り除いた後の創傷治癒に、メラトニン・セリシン配合のパッチを使うことで、がんの再発を防ぎつつ、皮膚の修復を促せると期待されています。メラトニンには、がん細胞の増殖を抑制し、免疫機能を高める作用もあるため、メラノーマ治療に適しているのです。

日本でも皮膚がんの患者数は年々増加傾向にあり、新たな治療法の開発が急がれています。メラトニンとセリシンを活用した創傷治癒パッチは、皮膚がん治療の選択肢を広げてくれるかもしれません。

【創傷治癒パッチの課題と展望】

メラトニン・セリシン配合の創傷治癒パッチは、皮膚の修復や皮膚がん治療に有望ですが、まだ実用化には課題が残されています。パッチに使う素材の選定や、成分の配合比率の最適化などが必要です。また、長期的な使用による副作用についても十分な検証が求められます。

しかし、これからの研究の進展により、より効果的で安全性の高い創傷治癒パッチが開発されていくことでしょう。将来的には、皮膚がんをはじめとする様々な皮膚疾患の治療に役立つことが期待されます。

メラトニンとセリシンの力を借りた創傷治癒パッチは、皮膚の健康を守り、皮膚がん治療の新たな可能性を切り拓く、画期的な技術と言えるでしょう。皮膚の悩みを抱える人にとって、朗報となるに違いありません。

参考文献:

- Slominski et al. (2024) Melatonin/Sericin Wound Healing Patches: Implications for Melanoma Therapy. Int. J. Mol. Sci. 25(9), 4858; https://doi.org/10.3390/ijms25094858

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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