「日大ブランド落ちません!」ぶちギレ司会者(日大広報部)でさらに炎上した日大会見
週刊文春が23日発売号で悪質タックルの内田監督コメントを暴露
前記事(悪質タックル問題で逃げる日大広報部の不可解~日大の今後をシミュレーションしてみた)で日大広報部の対応について「火に油を注ぐどころか、ガソリン缶を背負って飛び込むも同然な支離滅裂な対応」と書きました。
そして本日23日、この日大悪質タックル問題で、取材3件(いずれも石渡が取材を受ける側、うち1件は電話取材)を終え、自宅に帰ると、まさかまさかの日大会見。
23日発売の週刊文春で、試合終了直後の記者会見について反則を示唆する内容を掲載。さらに音声データも公表予定(24日朝)。
あまりにも批判が強く、世論に圧されたこともあってか、緊急会見となりました。
私もネットで見ていましたが、結果的には「火に油を注いでガソリン缶を背負って飛び込み、さらに火薬を追加投入」という史上最悪の記者会見となってしまいました。
繰り返しますが、日大と日大広報部は何をどうしたいのでしょうか。
記者会見の内容は宮川会見の否定
記者会見に出席したのは内田正人・前監督、井上奨コーチ、弁護士(同席のみで結果的には何も話さず)、それに司会役の米倉久邦氏(初老/広報部所属)の4人です。
記者会見の内容は内田・井上両氏とも関学選手・関係者に謝罪。
一方で、「信じていただけないかもしれませんが、私からの指示ではありません」と内田前監督は指示を否定。
怪我という言葉を使ったかどうか、井上コーチは当初否定。しかし、別の記者が質問すると「覚えていない」と回答を変えました。
日大アメフト部コーチ、しどろもどろ会見 ケガ発言「ない」→「覚えていない」(ハフポスト 23日21時57分配信)
宮川選手の記者会見については「誘われていないので」(内田前監督)、関学への謝罪をすぐしなかったことについては「電話でするものと思っていた(関学が電話するのが筋、という意味?)」。
結局、まとめると、自分たちは悪くない、という一点です。
最後に、内田正人・前監督は「学内に設置されることになった第三者委員会の調査が終わるまで、大学本部の常務理事の職務を一時停止して謹慎する」。井上コーチは「辞任したい」と発表しました。
炎上状態の記者会見に燃料投下の司会進行役
さて、この日大の記者会見、宮川会見の全否定と言っていい内容です。それだけでも炎上状態が収まらないところに、余計に燃料投下をした、と言ってもいいのが司会進行役です。
デイリー23日22時50分配信記事によると、どうも広報部所属の職員。
その後、日本テレビ・ニュースゼロで広報部所属職員の米倉久邦氏であることが明らかになりました。
この職員はこういう記者会見を仕切ったことがないのか、それともマスコミの長すぎる質問にうんざりしたのか、途中からヒートアップ。
その一端をご紹介します。
(質問の長い記者に対して)やめてください。やめてください!次にマイク渡して!みんな質問したいのだから!
質問をやめないなら記者会見を打ち切りますよ!
あなたは黙ってください!
どうも予定が90分程度だったらしく、そのあたりからさらにヒートアップします。
記者会見、これで21時30分すぎたので終わります。みんなやるのですか?何十人もやるのですか?いつまでかかるかわかりませんよ。
同じ質問なのでもう打ち切ります。これ以上やっていてもきりがないです。
(「違う質問をします」と言う記者に対して)違うのを言えばいいものではありません
全員から聞けないですよ、もう十分に聞きました。
さらに報道陣から「会見はみんな見てますよ」と諫められると
「見てても、見てなくてもいいんです!」
極めつけは、
(「司会者のあなたの発言で日大のブランドが落ちてしまうかもしれませんよ」と抗議に)
「落ちません!」。
これには会場内から嘲笑が出てしまいました。
その後も、「これで終わりにします」「やめてください」「さっきから、しつこい」など、攻撃的な言い方は止みません。
さっそく、「司会」がキーワードのトレンド入り。ヤフトピでは「日大会見 司会と報道陣が応酬」と出るほどです。
関学会見・宮川会見と比較してみた
日大記者会見は、もうコントであればどれだけ笑えただろう、というほどのひどい進行です。
そもそも内田・前監督、井上コーチの釈明と宮川会見の否定、という時点で相当ひどいものでした。それに輪をかけたのが司会進行役の広報部職員です。
確かに殺気立つマスコミが長く質問するなどマナー違反という点は多々ありました。これはメディアスクラムを防ぐ、という点でマスコミ側の自制が求められるところです。
が、それを含めたとしても、進行役が語気を強めてしまうのはいただけません。
冒頭からして、関学会見、宮川会見とは明らかに差があります。
関学会見
それでは定刻になりましたので記者会見をはじめさせていただきます。本日はお忙しいところ、関西学院大学アメリカンフットボール部主催の記者会見にお集りいただきありがとうございます。
もうお分かりかと思いますけど自己紹介だけ。私、関西学院大学アメリカンフットボール部のマネジメントの統括をしております、ディレクターの小野宏と申します。本日はよろしくお願いします。
隣は紹介する必要もないと思いますけど、鳥内監督です。
宮川会見
お待たせしました。それでは会見を始めます。ご存知のように今月6日に開かれました日本大学と関西学院大学のアメリカンフットボールの試合で日本大学の反則によって関西学院大学の選手が負傷し、目下、大きな社会問題となっております。本日はこのとき反則を犯し、退場処分を受けた日大の選手が会見者としてお越しです。試合後、マスコミの取材には応じられていませんでしたが、代理人を通じて日本記者クラブで会見したい、というご希望がありましたので真実を知るためには当事者であるご本人の話が不可欠と判断しまして本日の会見をお受けしました。(弁護士同席の経緯、進行などについて話した後)申し遅れましたが、わたし、司会を務めますのは当クラブ企画委員のスポーツニッポン・宮内と申します。
どちらも司会役は冒頭で自己紹介をしています。
まあ、関学会見は小野ディレクターも司会をしつつコメントもしていたのでなおさら必要でした。宮川会見でも同じ。では日大会見はどうだったでしょうか。
日大会見
司会 もう、皆さん、おいでですかね?
※マイクのハウリング音
司会 大丈夫ですか?どうもお足元の悪い中、本日は遅い時間にお越しいただきありがとうございます。これから反則タックルについてアメリカンフットボール部の記者会見を開きます。会見に出るのは内田正人監督、それから井上奨コーチ、こちらに同席しているのは弁護士で総務部法務課の(聞き取れず)弁護士。では、まずこちらからお話し申し上げますので内田監督、お願いします。
司会者である米倉氏が自身について名乗っていません。この時点でのマナーもよろしくない、と言っていいでしょう。
まして、途中からイライラしながら声を荒げるなどの進行は明らかに日大のブランドを損ねています。
米倉氏の詳しい経歴は不明ですが、米倉氏よりも年下であろうマスコミ陣を下に見ているのは明らかです。
年齢で言えば、この米倉氏は宮川会見の司会であるスポーツニッポン・宮内氏(宮内正英・常務取締役編集担当)と同じくらいか、やや上でしょうか。
もちろん、記者の心情として、宮川会見のときは同情的な雰囲気があり、日大会見のときは不誠実な回答にいらだっていた、という違いはあります。
が、それにしても、司会の力量と言いますか、ブチ切れ方は尋常ではないものがありました。
仮定質問の収め方でも力量に違いが
宮川会見でも日大会見でも仮定の質問が出ています。この対応も大きな違いがありました。
宮川会見
司会・宮内「すみません、今の質問、仮定の質問なのでよろしいですかね?」
やんわり、穏やかに収めて、記者側も質問を撤回しています。
日大会見
司会・米倉「すみません、そういう仮定の質問はちょっと、やめてください。で、あの~、もうこれで21時30分過ぎましたんで(苦笑)、一時間半以上やっていますんで、これでもう終わりにしたいと思います」
しかも、日大会見、改めて確認すると、記者の井上コーチに対しての質問は、仮定の質問とは言えるかどうか、微妙なところです。
記者 「宮川君との感覚のズレがあるということでこのまま平行線をたどるかもしれない。彼のアメフト人生を結果的には奪っている、かもしれないです、現在。それに対して心の痛みはありませんか?」
この質問、井上コーチは答えに窮していました。それを見かねての「仮定の質問はおやめください」とも言えます。
「21時30分を過ぎたので」というあたりは意味不明で、仮に当初予定が90分だったとしても、気にせず続けるべきでした。
マスコミ側が1人1問を無視して質問したにせよ、司会としてはお粗末すぎます。
危機管理ができていない、という点では伝説の会見へ
謝罪と言いつつ、何一つ、真相を明らかにするわけでもない、宮川会見は全否定。身の処し方も、「当分の間は常務理事を謹慎。第三者委員会に従う」。そして当事者以上に司会がエキサイトしてしまった日大会見。
大学広報としてリスクマネジメントが全くできていない、という点では伝説の記者会見として語り継がれることでしょう。
では、こうしたネガティブな事件についての記者会見ではどのような対応が望ましいでしょうか。
まず、マイクはきちんと整備すること、司会進行役は冷静でいられる方を置くのが定石です。
時間はどう考えても予定通りに収まらないですし、何時間かかってでも、質問は全部受けるべきでした。
あるいは、
「本日、多数ご質問いただいているが全てにお答えできません。恐縮ですが、回答できなかった分については文書でいただいてもよろしいでしょうか」
あるいは、
「本日はすでに長時間にわたりお時間いただいています。申し訳ないですが、本日はひとまず終了させていただき、後日、改めて開催するということでお願いできますでしょうか」
などと言えば、収まったはずです。
記者会見の運営一つできないとは、日大広報部はすでに学級崩壊に近い状態、と言わざるを得ません。
常務理事の謹慎で済む?
内田前監督については、「常務理事の謹慎・職務停止」という表明が出ました。第三者委員会が結論を出せば、それに従うとのこと。
逆に言えば、第三者委員会で何もなければ常務理事を続けるということを意味します。
あまりにも甘い裁定であり、これはこれでまた問題を長引かせるだけでしょう。結果、国・文部科学省、スポーツ庁や関東学生連盟など外圧がさらに強まり、その分だけ日大のブランドイメージが落ちることになります。
それについて、ぶちギレ司会者・米倉氏の「落ちません!」「見ていても見ていなくてもいいんです!」という話し方が今の日大の惨状を物語っている、そう考えるのは私だけでしょうか。