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グーグル・ニュースと戦う欧州新聞界  ―ドイツは仏のデジタル出版基金設置案には組せず

小林恭子ジャーナリスト

世界中のコンテンツ媒体から情報を集積して、独自のニュースサイトを作るグーグル・ニュース。新聞や雑誌などのコンテンツ制作側は、グーグルから対価を得る権利があるのではないだろうかー?

そんな意識が強い欧州出版界では、昨年末から今年にかけて、グーグル側から一定の譲歩を引き出す事例が発生している。

昨年12月、グーグルによる記事利用をめぐり、ベルギー新聞界とグーグルが合意に達した

これによると、グーグルは記事を利用した際にベルギーの発行元や著者にお金の支払いはしないが、ベルギー側がそれまでの交渉に要した法律上の費用(500万ユーロ=約6億3000万円=といわれている)を負担し、「発行元の媒体にグーグルが広告を出す」という。

今月1日、グーグルはフランスの出版界と歩み寄りの姿勢を見せた。グーグルが6000万ユーロ(約75億6000万円)に上る「デジタル出版イノベーション基金」を立ち上げ、同国出版社の広告戦略を支援することになったのだ。

グーグルのエリック・シュミットCEOのブログによると、この基金は「フランスの読者のために、デジタル出版の開始を支援する」もので、「グーグルの広告テクノロジーを使って、フランスの出版社がオンライン収入を増やす」ように、協力関係を深めるという。

ベルギーとフランスの例では、「記事をリンクしたことに対価を払う」という形にはなっていないので、これに反対してきたグーグルにとっては方針を曲げなかったともいえるし、フランスやベルギー側は資金援助を引き出すことができたので、一定の成果が出たともいえる。互いに自己の主張を曲げなかったように見せながらの、玉虫色の結果となった。

一方、強気の姿勢を崩していないのがドイツだ。

ドイツ新聞発行社協会の広報担当者アンヤ・パスキー氏がニュースサイト「ザ・ローカル」に語ったところによると、フランスのようなグーグルとの和解策は拒絶するという。

パスキー氏は、フランス型の良い点は、「第3者が作ったコンテンツのアグリゲーションというビジネスモデルにはお金がかかるものだ」(ただではできない)ということが周知された点だという。

残念な点は、合意がグーグルとの間でのみ締結され、ほかのニュース・アグリゲーターには適用されるようになっていないことだ。

ドイツの国会では、著作権法の一部を強化し、ニュース・アグリゲーターが出版社が作ったコンテンツを利用するときに対価を払うよう、審議が続いている

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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